先日、口周りに怪我をしたのですが、その際にあたりまえですが、非常に食事が摂りにくくなりました。その中でも「食事形態って大事だな」とおもった出来事があったので、今日はそのお話。
口を怪我した
詳細は痛々しいので割愛しますが、口周りを怪我してしまいました。治るまで困ったのが、「噛みちぎれない」「咀嚼できない」ということ。
さすがにそうなると食欲も落ちるので、そこまで苦では無いのですが、家族でご飯をするときなど、なかなか不便になりました。
口って大切ですね。食事もですが、お話もしにくい。歯磨きもなんだか難しい。常に動かしている部分なので、怪我をするとこんなに不便なのか、と思ったわけです。
噛み切れないならどうする?
食事がうまく噛み切れない時期があったので、配膳の段階で、私の食事は1口サイズに切っておいたり、噛み切りやすい食事を中心に作っていました。どうせ母で主婦である自分が料理をするのですから、それくらいは対応できるので、自分で調理する以上、食べやすいものを積極的に作っていました。
しかしそんななか問題が。そう、外食です。
外食へ行ったよ
ある日、家族で外食に行きました。子どもたちが「ピザが食べたい!」というので、小さいピザを注文。他にもいくつか頼んだのですが、「ちょっとピザ食べてみようかな?」と思い、1切れ自分のお皿に入れました。
さて、これどうやって食べよう・・・。
そういえば、口が痛いから上手く動かせない。かぶりつくのはしんどいな。そう思った私は、「ピザを1口サイズに切っちゃおう」と手元のナイフで細かく切ってみることにしました。
うん、これなら噛み切る必要もないし、痛い思いすることもなく食べられる。良かった良かった。…でも、あれ?なんか美味しくない!!どうして?
美味しさを感じるには
ピザってみなさんどうやって食べますか?
だいたい三角に切ったピザの角からパクっとくわえて食べますよね?そう、みんなそうなんです。ピザをいちいち細かく切って、1切れずつ口に放り込むなんて食べ方、普通はしませんね。
ピザはかぶりつくもの。そういう先入観を持っているのが普通なんです。そうすると、違う食べ方をしたときどうなるか。全く美味しくないんです。
以前にも記事にしたのですが(過去記事→☆)、私達が食事を美味しいと感じる一番の要素は「視覚」です。視覚的に美味しいと思えないものは、どれだけ味覚的に素晴らしいものでも美味しいと感じられないのです。
今回私が口にしたピザ。別に味は美味しいのだと思います。子どもたちはぺろりと平らげました。けれど私には美味しいと感じられなかった。なんででしょうか?それは、細かく切り刻まれている状態や、チーズがトローンとならない食べ方からくるものではないでしょうか?これはもはやピザとは言えないのでしょうね。
食感が違うと味が変わる
私のブログのアクセスで「とろみ まずい」という検索ワードで来られる方が、かなり多いのです。このキーワードってとっても重要と思っています。やはり「お茶はサラサラしているもの。そこにとろみつけたらお茶じゃない」というイメージがしっかりとあります。とろみ剤を否定するつもりはありませんが、その気持はとてもよくわかります。今回のピザについても同じではないでしょうか?ピザを刻んだら、もはやピザじゃない。そう、そうなんです。
嚥下障害を患うと、食事をそのままの形態で食べられなくなることがしばしばあります。そうなると、食への楽しみが大幅に損なわれてしまいます。
コレに対しての明確な解決策が有るわけではありませんが、食形態で「この形態にしないと誤嚥・窒息する可能性が高い」というラインがあるならば、それを踏まえつつ、最大限彩りや香り、配膳、環境などを「食事を楽しむ」という方向に向けるということは重要だと考えています。
私達言語聴覚士は、「この食形態です」とお伝えする立場です。そうすると、嚥下障害の方からしたら「食べる楽しみを奪う人」になることもあります。そうならないためにも、最大限どこまでであれば食の楽しみと安全のバランスがとれるのか、考えていかなければならないな、そう感じた経験となりました。
実はまだ口の怪我、治りきっていないのです。はやくピザ食べたいな♪食事を楽しむことを自分はもちろん、誰に対しても諦めないで支援していきたいものです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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