【びぃどろ講座】「美味しい」の決め手

美味しいって感じていますか?

食事を美味しいと感じるにためには、どんなことが必要なんでしょうか?今日は、わたしたちが「美味しい」と感じるためには?についてのお話です。

味の基本

味には5つの基本味があります。甘味、酸味、塩味、苦味、旨味ですね。生まれたばかりの赤ちゃんは、この5種類の基本味の中でも「甘味」と「旨味」に対しての感度が高いと言われています。中でも「旨味」は羊水にも含まれており、お母さんのお腹の中にいるときから慣れ親しんだ味だそうです。母乳も乳糖を多く含んでいるため甘味が強いことからも、これらの味を好むのは容易に想像できます。
赤ちゃんにとって「旨味」と「甘味」は生きるために必要な味なんでしょうね。

そしてこの5種類の基本味に加えて「辛味」と「渋味」があります。これらは痛覚を刺激したり、身体にとって害があると感じられる味と間違えられることもあり、子どもは拒否を示す傾向があります。

この7種類すべてが総合され『味』と言われるのです。

『美味しさ』と『味』の違い

しかしながら、同じ食べ物でも、家族や大切な人と食べるとよりいっそう美味しく感じられたり、同じ食事内容でも、普通食と比べてミキサー食ってすこし味が違う気がする・・・そう感じることはないですか?

そうです、『美味しさ』と『味』って、何か少し違うんです。

五感が加わる

上述の7種類の味に加えて、五感が加わることで、『味』は大きな広がりを見せます。
この五感。ご存知の方も多いでしょうが、『味覚』『触覚』『嗅覚』『視覚』 『聴覚』の5つです。ここにいわゆる『味』に付随した「こく」「香り」 「テクスチャ―」 「温度」 「光沢」 「形状」 「音(咀しゃく音)」などが加わることで、グンと味わいが拡がり、『風味』や『食味』と言われるものに拡大するのです。

五感の比率

五感によって味を感じるのは何となく誰もが分かると思いますが、この五感のうち、一番『おいしい』に影響すると思いますか?・・・それは、

視覚です。

なんと、この五感のうち視覚による影響は85%にも及びます。「美味しさ」の理由のほとんどが視覚からなんです。次に聴覚が10%前後、嗅覚が2.5%、触覚が1.5%となります。なんと味覚は1%‼私たちの味覚は、どれだけあやふやなのか…ということが分かりますね。

最後のスパイス

そしてこれらの「風味」に最後に必要なスパイスがあるのです。それは・・・?

環境

雰囲気などの空間の環境。習慣や文化によって大きな影響を受ける、食環境。健康状態や歯の状態、心理状態などから影響を受ける、生体内部の環境です。特に3つ目の心理状態は他者との交流も含まれるので、大切な方々と一緒に食べると味覚へ好影響を及ぼし、それに対して緊張する相手との食事は味を感じない、などが起きるもうなずけますね。

加齢に伴う味覚変化

年を重ねると、以前に比べて味付けが濃くなった…ということはないでしょうか?あとは、実家の味付けが濃くなった、などもありますね。実はこの味覚も、年齢とともにはっきりと変化していきます。

最も変化するのが塩味です。60歳を過ぎたあたりから急激に味覚が変化していきます。味覚の次が苦味。この2種類の味覚は急激に鈍くなっていきます。甘みは大きな変化はありません。

ここで注目なのが酸味です。なんと酸味は、60歳代までは大きな変化はなく、わずかに鈍くなる程度なのですが、70歳代を過ぎると60歳代に比べて、逆に敏感になります。高齢者が酸味を苦手になることがあるのはそういった理由からということが分かります。

美味しく食べよう

このように『美味しさ』の決め手はたくさんありますが、やはり美味しさの決定は、『だれと』食べるか、ではないでしょうか。

前述のとおり、味を決める最後のスパイスである『環境』。これは食べるときの環境全般を指します。誰と、どんな雰囲気で食べるか。そこでの会話、笑顔、思い出が一番のスパイスとなるわけです。

美味しい思い出をつくる。それは『だんらんづくり』です。

びぃどろの仕事、『だんらんづくりのおてつだい』は、結局は大切な人と過ごす時間をつくるお手伝いなのだと思っています。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。