【びぃどろ日記】コロナ禍の入所者

先日、昔の戸別訪問の利用者家族からお電話がありました。「久し振りに長岡さんの声が聞きたくなって」というのです。

今日はその話。

入所利用者のコロナの影響

山口県内はコロナウイルスの感染者数は、今日現在でも30数名であり、市内での感染拡大もありません。その関係で、良い意味でも悪い意味でsも、危機意識が乏しい部分があります。

とはいえ、市内の病院や施設は面会禁止であったり、ソーシャルディスタンスを保つ現場は多くあります。

今回お電話頂いたAさん。この方はお子さんに障害があり、全介助レベル。そしてご自身の加齢とともに介護の限界を感じ、入所希望施設に空き部屋が出たタイミングで入居に踏み切ったのです。それがちょうど1年前。

入所後の面会

Aさんのお子さんが入所された施設は、頻繁に自宅への外泊も促してくれる施設でした。そしてAさんのお宅も毎週末に自宅で家族水入らずを楽しみ、また週明けに入所施設へ戻るという生活を送っていました。

それが、このコロナウイルスの感染拡大とともに、面会・外泊禁止となったんです。さて、どうなったでしょう?

毎週のようにあった外泊が、ある日突然ピタリと無くなりました。そしてできるのは電話だけ。お子さんの写真一枚手元に届くことはありません。

Aさんが施設へ週に1回電話をかけ職員さんに近況を確認すると「元気ですよ」とお返事を聞くだけ。お子さん本人は重度の障害があるため、会話ができません。ですから電話をつないでもらうこともなく、ただ、スタッフさんに近況を聞くだけの日々となりました。

子どもに会えない

私も子どもがいます。何かしらの事情で子供と会える日数に制限が出たら、それはとてもさみしいものです。そこにきてこの状況。万が一感染したらどうしよう?本当に元気にしているのだろうか?なにか困ってることはないか?など不安が頭をよぎります。そして、電話をいくらかけても、本人の様子を見ることはできなかったら・・・?

会えないのは仕方ない、でもせめて顔が見たい。そう思うのが親心。

オンライン面会ができないの?

この話をFacebookにアップしたところ、全国的にはオンラインでの面会や、動画をYoutubeの限定公開にアップしたりなど、入所者と家族をつなぐ仕組みを取り入れている施設が、いくつか有るのだということがわかりました。

オンラインでの面会はそうですが、自宅に端末がないご家庭も多いので、待合室にある専用タブレットを使って、受付と居室をつなぐ方法をとっている施設、動画をオンラインでアップしている施設、写真を自宅へ郵送する施設。いろいろな場所が、いろいろな方法で利用者と家族をつないでいました。

すごい!

地域差・個人差

どうしてもこういったオンラインを導入するための仕組みには、地域差や個人差が大きく関係しています。

こちらの地域は前述の通り、流行もさほど大きくなかった地域ではあります。そのため、危機意識もさほど強くはなく、「なんとか現状を凌ごう」というイメージが強くなります。

ですからどちらかといえば、我慢して我慢して、じっとしておこう。となり、新しい試みを積極的に始めることには控えめでした。

しかし東京・埼玉・神奈川・大阪・愛知・北海道・福岡などの、大流行した地域は「凌ぐ」ではいつまでもつかわかりません。むしろこの現状に合わせていこうと動きます。そう、動くんです。

この動かずに耐えた地域と、動いて変化を起こした地域。これが大きなちがいなのではないでしょうか?

動かなければ変わらない

結局の所、山口県では現状が安定しているため、積極的に現状を変える行動を起こすことをあまりせず、もう少し待とう、もう少し耐えようと凌ぐ形になるため、オンラインなどの活用は進みません。

これはオンライン面会などもそうですが、「時間が解決してくれる」となると、待つしかありません。「私達が解決しよう」という能動的な動きにはどうにも結びつかなかったのです。

自粛生活を余儀なくされてから3か月。いったいいつまでこの状況が続くのかはわかりません。

こどもに会いたい

冒頭のAさんが私に電話をくれたのは、お子さんが入所してちょうど1年目。お子さんがいない寂しさ、それを共有することができない不安感から、私へ電話をくれたのだと思います。

とはいえ私に出来ることはAさんの話をきくことだけ。私が施設を変えることはできません。

でもね、そういう気付きを発信して、それがどこかにつながるかもしれません。

私がもし施設の管理者に会えたら、ご家族の気持を伝えるでしょう
私がもし施設の管理者になることがあれば、そういう施設にするでしょう。
私の発信を聞いた、どこかの誰かが、「自分のところの施設はどうだろう?」なんて考えるかもしれません。

小さな働きかけが、小さな動きを生むのかもしれません。

私はAさんと、ただ話し、ただ聞き、ただ頷くしかできません。それがもどかしいと感じたある日の夕方。

私のこの小さな発信は何も産まないかもしれないけれど、これからを考えるキッカケとなったのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。