【びぃどろ日記】父とリハビリテーション

私の父(正確には義父)は進行性の病気を患っています、父を通していつも考えることがあるのです。父にとってのリハビリテーションってなんだろう?

父の病気を理解する

父の病気がわかったとき、それはそれは家族みんなパニックでした。一般的にはあまり聞き慣れない病気。しかも進行性。命に関わる病気。本人も含めて、家族が時間をかけてそれぞれのやり方で受け入れる。だれも“受け入れ”を手伝うことはできないわけで、それぞれが、それぞれのやり方で受け入れるという感じでした。

私はやはり「嫁」という立場なので、比較的冷静だったと思います。現在の父の状態でも使える介護サービスなどを一気に導入し、父の環境を整えることに尽力しました。訪問看護ステーション経験の中で、介護も医療も障害も、一通り制度を学んでいたことが役立って良かった!とも思いました。

でも、制度を活用して父の身の回りを整えただけで満足しちゃいけない、それを感じたのです。

第1目標

病気発症後は申請をかけても「自立」でしたが、後に要介護認定がつき、ケアマネージャーさんがついてくださいました。そして最初のケアプランに記載していただいた目標が「ハウステンボスに行く」でした。

私達家族と義両親とで長崎旅行を計画。車での旅行を計画しました。準備も順調に進み、いよいよ旅行だ!となった2日前。子供が嘔吐下痢にかかる(・_・;)えー。
これは計画失敗か、と思ったのですが、子供が「じいちゃんとハウステンボス、絶対に行く」と言い、大嫌いな点滴を自ら受け、まさかの1日で回復。無事に長崎旅行を楽しめたのです。

ケアマネさんにもとても喜んでいただけて、「こういうのがケアプランとして実行されていくのって良いなぁ」としみじみ思ったのです。

第2目標

その後ケアマネさんがコロコロと変わり、正直あまりこういった具体性をおびたプランから遠のいているのが、ちょっと悩みでもあります。けれど私も嫁という立場である以上、妻である母や、息子である主人の意見を見守りたいという部分もあり、積極的な介入は遠慮している部分もあります。

結局のところ、私自身の気持ちの落とし所として、「私のできるリハビリテーションを実行する」と、割り切って過ごしています。

そこで私が考えたのが「孫との交流」。我が家は、敷地内同居であり、義両親の家(母屋)とうちとが隣り合っています。そして、孫である子供が、毎朝家を出る時に多少遠回りであっても「母屋の窓の前を通ること」と決めたのです。

義両親は毎朝必ずその窓の前に立ちます。そして孫と「おはよう」の挨拶をします。

これから先、どんどん歩行が難しくなり、そこに立てなくなるかもしれません。そしたらそこに介護ベッドをおきます。

これから先、どんどん発語が難しくなり、「おはよう」と言えなくなるかもしれません。そしたら手振りでも挨拶をします。

人は目的があれば行動ができます。いまでも父は毎朝歩行器で窓辺に立ち、「おはよう」と言ってくれます。それでいいのです。それだけでいいのです。

第3目標

朝の挨拶にも慣れた今日このごろ。だんだんと長距離移動がきつくなってきた父。「温泉に行きたいな」なども言うので、私達は喜んで計画するのですが「やっぱり長距離はつらい」と言って実行できないことが増えました。母の介護疲れもピーク。そんな中ふと感じたことがあります。

旅行とか特別感のあることって、私達も疲れる。
普通のことをあたりまえに楽しむのがいいな。

旅行に行ったら、介護する母もきっと疲れ切ってしまいます。それなら日常の中で、普通の楽しいことをちょっと特別感を持ってするほうが良いな、と思ったのです。

普通のことってなんだろう?

“せごどん”現る

そんな中、私がいつも仕事でお世話になっている“せごどん”こと、志垣PT()が、下関へ来ることに。そして、ど田舎の下関に来る際に「田んぼのど真ん中でドローン飛ばしたい」と言うのです。

「あー、うちの田んぼとか庭を使っていいですよ。・・・うん、田んぼ、庭…庭?」

そこで閃いたのです。「父にドローンを見せたい!そしてうちの家の航空写真と動画を見せてあげたい!」

それを志垣さんに言うと快諾してくれました。やった!

そして、当日の朝、父に「今日友だちがうちに来るから、庭でドローン飛ばすよ!見ようね!」と言うと、ミーハーな父は、すごく嬉しそうにするのです。

ドローンを飛ばす

さて当日、父の部屋の窓の前にドローンをスタンバイ。そして、飛び上がるドローンに家族全員大喜び。父も母も、夫も子どもたちも大喜び。

初めてのドローンに興味津々の父。持たせてもらって「軽いのぉ」と満面の笑顔。

私が嫁ぐずっと前に、航空写真の押し売りを断れず、そこで購入した写真がずっと床の間に飾ってあったのですが、今回志垣さんのドローンで、今の長岡家の写真を沢山撮ることができたので、そっちに差し替えることにしました。

普通の中に特別感を

あえて特別なイベントをしなくても良い。それを目標にしなくてもいい。ただ、日々の生活で家族と楽しめることの中にあるちょっとした「特別感」。それを大切にしたいと思っている私。

たしかに病気は進行し、これから先どうなるかわかりません。けれどそれは進行性の病気があってもなくても同じです。私だって誰だって、明日生きているかわかんないんです。

ふつうのコトが一番尊い、と言いますが、「普通」ってなんだろう?きっとあたりまえにやってる全てのことなんでしょうね。

「普通」を「継続」すること。これがリハビリテーションの本質なのかな?と思うのです。そして「普通」のことって、あたりまえだから大事にできない。意識できない。そうなるとおざなりになり、継続する意欲が落ちてしまう。

だからこそ「普通」のなかに時々「特別感」を忍ばせるのです。

きっと新しい航空写真を飾ったら、それを見るたびに、ちょびっと楽しい気持ちになります。訓練に来てくれるスタッフさんとかにも話すかも?なんならデイサービスに持っていっても良いように小さい写真もプリントしよう。そうしたら話題のネタにもなるかもしれません。

こうして日々、父へのリハビリテーションの追求をしている私。嫁という立場は非常に無力です。なにもできません。ですが、それでもこうやって父の生活に「特別感」を届けることができればいいな、そう思います。

さあ、明日は何をしようかな?毎日の中に特別感を。そんなことが楽しめる。そういう日々を大切にしたいですね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。



2 件のコメント

  • 喜んでもらえて良かったw

    普通の中に特別感を・・・

    同じような感じでσ(^_^)は

    「日常に非日常をスパイス」

    といったコンセプト?で関わってましたw

    その非日常が日常になるように♪
    それが自立支援なんだろうな・・・って思って(^_^;

    また機会があれば持参しましょうw

    次はもうちょっと風が強くなければいいんだけどなぁ・・・(^_^;

    • ありがとうございます。
      やはり、どんなものであっても立場が変われば受け取り方が変わってきますね。

      非日常も時々だから楽しい
      日々の暮らしを丁寧に過ごすこともですが
      こういうスパイスが入るともっと楽しいですね

      今度は微風であることを願って(笑)