【だんらんストーリー】ペットは立派なセラピスト

訪問看護ステーションに勤務していた頃、利用者さんAさんのお宅に伺うと、家族が増えていました。そう、犬が仲間入りしていたのです。

はじめまして

それはそれは小さな柴犬。豆柴ではないと思うのですが、小さなワンちゃんです。それまではペットを買うなんて話はありませんでした。だって、要介護者がいるお宅です。キーパーソンである奥様も、ご主人であるAさんの日々のケアに精一杯。そこにワンちゃんのお世話まで入ったら大変じゃないかしら?

どうしてペット?

実はこのわんちゃんがお家に招かれる数ヶ月前…私の妊娠が判明したのです。

当時、私の訪問で言語訓練を受けていたAさん。私の勤務する訪問看護ステーションにはSTは私1人しかいなかったので、私の妊娠イコール訪問終了または中断だったのです。

私の妊娠を報告した際、Aさんご家族はそれはそれは喜んでくれました。しかし、「長岡さんが休みに入ったらどうなるんだろう…?」と不安になったのです。

ワンちゃんセラピスト

そうしているなか、なんとおうちにワンちゃんが訪れました。どうやら「犬相手に声かけるとかすれば、訓練になるかな?と思って」とのこと。なるほど!

とは言え、私の妊娠・出産に伴うお休みで、そこまで困らせるのは非常に罪悪感。しかし、市内にSTのいる訪問看護はほとんどなく、引き継ぎも難しい状況。このままだと、私のいない1年間は本当にST訓練がなくなります。

実際1年なくても保てる能力であるならば、本当は訪問は不要なのかも知れません。けれど当時の私にはなかなかそこまで考えられず、ケアマネさんといろいろと相談し、どうにか別事業所に1年間ということで引き継ぎを快諾していただくことができました。良かった!

これで私がいない間は、他のSTさんとワンちゃんセラピストと一緒に過ごしてもらえる!

急な引き継ぎ

ワンちゃんが家にやってきて、ほんの僅かあと、私は急遽休職することになりました。そう、切迫流早産の診断がおりて、いきなり自宅安静になったのです。こればっかりは赤ちゃん優先ですから自宅でおとなしく過ごすことにし、書類などはメールで対応となりました。

STさんへの引き継ぎもなんとか電話で簡単に済ませて、おねがいしました。同業者だし、特に大きな問題などもない方だったので、スムーズに引き継ぎができました。

育児休暇があけて

切迫流早産で5ヶ月ほど早く仕事を休み、さらに1年の育児休暇を経たので、およそ1年半ぶりに仕事に復帰した私。Aさんとの再会を果たします。そして1年半の経過を伺って、再度STさんから引き継ぎを受けました。ちょっといろいろとあったようですが、なんとか元気にお過ごしでした。

さぁワンちゃんは・・・?

で、でかい!!(゚∀゚)

そうか、犬は成長するのか…。アタリマエー!!

実は犬が・・・

実はわたし、犬が苦手です(笑)というか、怖いのです(笑)

幼児期に犬に追いかけられたことがあり、それがいまでもトラウマ・・・。

この「訪問リハ」という仕事をしていると、まぁ犬を飼っているお宅に訪問することはしばしば。もう毎回それが怖くて怖くて(-_-;)

このAさんのお宅のワンちゃんも、はじめましては手のひらサイズの子犬。それですら私は大騒ぎ。Aさんの娘さんが私の肩に乗せてきて「長岡さん怖いの〜ww」と大笑い。ひどいー。

それが子犬の状態でお休みに入り、復帰すると成長している!!当たり前だけど大きい!!!

その後数年、私はAさん宅に通いましたが、自ら撫でることなどもできず、それを笑われながらすごしておりました。ワンちゃん、可愛いんだけど怖いんだよなー。

ワンちゃんセラピスト

ちなみにAさんはワンちゃんとの関わりをそれはそれは大切にされていました。言語障害がありましたが、声をかけてみたり、片麻痺がありましたがボール投げをしてみたり。

一度は低い椅子に座った状態で、ボール投げをしていたところ、「あれ?立てない!?」なんてことも。片麻痺であったため、うまく力が入らず、立ち上がれなくなり、外出中の奥様が帰宅するまで、しゃがみこんでいたとのこと(;´∀`)

気をつけないと〜(;´∀`)

とはいえ、ワンちゃんの飼い方やお世話について、飼い主の心得など、いろいろな話を伺った期間であり、私にとってはとても貴重でした。いまはもう私も退職し、独立したのでお会いすることもなくなってしまいましたが、お元気でいらっしゃるとのことでした。

訪問を長くしていましたが、いろんなことを教えてくださったAさん。そしてペットが与えるエネルギーも見せてもらうことができました。

みなさんにとってペットってなんですか?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。