私の訪問の基本姿勢
私の訪問の基本姿勢は、
『いつ改善するかわからない機能回復に訪問時間を費やすより、「今」困っていることを「今」解決するほうが優先』です。
訪問内容が椅子の調整⁉
今日は、先日戸別訪問の際に、食事指導での介入した方に、椅子の調整で1時間の訪問が終わった話。
姿勢を見ることの大切さ
先日、食事指導についての戸別訪問の際に、お子さんの食事姿勢の話になりました。食事指導の際に、口周りの動きを見ることは当たり前のようにしていますが、実はそれと同じくらい姿勢を見ることは重要です。椅子を替えるだけで急激に状態が改善することも少なくありません。
訪問看護ステーション勤務のころ、いわゆる肢体不自由児の訪問が多く、多くのご家庭で座位保持装置や車椅子、バギーなどを見ていました。各お子さんの特徴に合わせた素材、掘り込み、ヘッドレストのパーツ、ベルト、カットアウトテーブルなどを選ぶことが楽しく、私もしばしば業者さんへ提案などをさせていただいておりました。
市内の流れとしては、通常は担当の病院PT・OTと福祉用具の業者さんとで打合せながら作成が一般的です。しかしそうなると1点問題が生じます。
病院リハスタッフの限界
病院の担当PT・OTが自宅に訪問することは難しいため、座位保持完成後に自宅で使用していく際に、フィッティングは保護者任せになります。もちろん定期的にメンテナンス日を設けてはいますが、そのメンテナンス日に合わせて大きな座位保持椅子を運ぶのは保護者の負担が大きいですし、日々の生活の中でお子さんの成長具合によってそのサイクルでは間に合わなかったり、クッションの洗濯などにより、ベルト位置がずれたときに気が付けないことが多いのです。
在宅リハスタッフがフォローしたい
そのため私は座位保持装置などの福祉用具は訪問の度に確認をするようにしています。そして、六角レンチなどで直せる部分については、その場で直します。
「あとで業者さんに電話してね」と保護者へお伝えすることは簡単ですが、保護者の方からしたら面倒くさいし、日々の生活にもまれて忘れてしまうものです。業者さんへの電話が必要であれば、その場で目の前で私が電話をかけます。その方が、どのパーツが何センチほどずれている、などの情報もその場で正確にお伝えできるからです。
訪問中に椅子を直す
そんなわけで対象児の座位保持装置を確認し、フットレストの長さが足りなかったため、六角レンチで調整しました。
そこへお母さんから更なる相談が・・・。
「お兄ちゃん(定型発達の小学低学年)が食事中姿勢が悪くて。いつも怒るんですけど・・・意識しなさいって言っているんですけど。これも椅子が関係していますか?」
ちょうどお兄ちゃんも在宅していたため座ってもらうとテーブルに対して座面があっていないことがわかりました。幸い、高さ調整用のネジ穴が多い、自由度の高い椅子だったこともあり、少しアレンジしてみました。
座面をやや前傾に。フットレストの面積がやや狭いので、それも影響していそうでしたが、さすがにそこまで直してあげることはできませんでした。(のこぎりとトンカチが要る。(;^ω^)
けれどお兄ちゃんからは「座りやすい!!」とのお返事。
「これで食事中怒られなくて済むね♪」とお母さんと笑い合う姿にホッとしました。
椅子を通して食卓を見る
普通の訪問リハであれば、お兄ちゃんの椅子の調整までは行いません。そんな時間があるなら訓練を・・・というイメージになります。
けれど戸別訪問をしている私は、この兄弟が食事をしている場面を想像します。ただでさえ療育のいるお子さんを抱えたお母さん。お兄ちゃんだってまだまだ甘えたいお年頃なはず。食事時間は身体がいくつあっても足りないほど忙しいと思います。
お兄ちゃんがだらしない姿勢で食事をしていたら、イライラすることもきっとあるでしょう。食事中、お母さんに構ってほしいなと思ったら、お兄ちゃんはわざと椅子にもたれてだらけたり。そんなこともあるかもしれません。
対象児のお子さん本人にとって良い支援をすることは当たり前ですが、やはり、お母さんにとっての良い支援を考える。これが重要と考えています。
『食卓を囲む』
これが楽しく穏やかなものとなるような支援をしたい。ここの本質を変えずに支援を続けたい。これが私の訪問の基本姿勢なのです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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