【びぃどろ講座】~たべること編~最後まで美味しいお粥の食べ方

お粥はビシャビシャになる?

嚥下食・介護食・離乳食として一般的なお粥。けれども、食事介助の際にお粥を用意しても、食べるにつれてお米と水が分離して、ビシャビシャになり、味も食感も悪くなりますね。ただでさえお粥にするとカロリーも減ってしまうのに、ビシャビシャになってしまうと、ますます食べられる量が減ってしまいます。

この水が分離する現象を『離水(りすい)』と言います。
じつは、このお粥。食べさせ方を工夫するだけで、最後まで離水することなく食べることができるのです。

なぜ離水するの?

そもそも、なぜ離水という現象が起きるのでしょうか?

ご飯を食べているときによく噛むと甘くなる、などと言いますが、これはご飯に含まれるデンプンと、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が結合することで、消化が始まりデンプンを糖に変えるからです。この消化・分解の際にご飯に含まれる水分が分離する、これが『離水』です。

つまり、『離水』はご飯(お粥)に唾液が入ることが原因なので、逆を言えば『ご飯(お粥)に唾液が入らなければ、離水しない』ということです。

離水しない食べ方があるんです!

では、具体的にどうやって食べればいいでしょうか?

[用意する物]
お椀A(お粥入り)・お椀B・スプーンA・スプーンB

①スプーンAを使って、数口分のお粥を、お椀Aからお椀Bに移します


②スプーンBで食べます


③スプーンBには唾液が付いたので、お椀Aに入れてはいけません


④またスプーンAをつかって、数口分のお粥を、お椀Aからお椀Bに移します


⑤スプーンBで食べます

つまり、Aのお椀とスプーンには絶対に唾液を入れないようにし、Bのお椀とスプーンが唾液が付く、ということを徹底するようにすれば、 これを繰り返すだけで、お椀Aの中に唾液が入ることはないので、アミラーゼによる分解が始まらず、離水はおきないのです。 Aのお椀に入ったお粥が離水しなければ、最後までもっちりとした状態で食べることができるのです。どうですか?意外と簡単な方法ですよね。

食べ方以外の工夫

食べ方の工夫以外で離水をさせにくくする方法として、専用のとろみ粉を用いるものがあります。
特殊ゲル化材と言い、いくつかのメーカーから販売されています。いずれも、一般的なスーパーやドラッグストアに置かれていることはあまりなく、通信販売や取り寄せが中心となります。

しかしこれらの効果は素晴らしいものがあります。日々のメーカーさん努力と技術はすばらしいものだなと感動するほどです。
これらの専用とろみ剤は、唾液の有無に限らず離水を最小限にとどめられるよう工夫されており、お粥自体も非常に滑らかに仕上がるよう工夫されています。
一番効果を発揮するのはミキサー粥です。お粥をさらにミキサーかけると、普通はでんぷん糊のようになってしまうのですが、これらの専用とろみ剤を用いると、そういったことなく、プルっとした仕上がりになります。
なかなか身近で購入できるものではありませんが、一度試されるのもいいかもしれません。

専用のとろみ材を用いる程ではないけれど、少し離水に困っているという方は、まずは今回ご紹介した食器の使い分けなどで対応してみてはどうでしょう?こういう道具を使った方法、専用のとろみ剤を使った方法。いろいろな方法を知っていると、対応できる幅が拡がりますね。

ぜひお試しください♪

皆さんの食事が、彩りをもちますように。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。