さて、お正月が過ぎました。今日は新年の生活を送ると言うことについてのお話
お年玉を渡す
私は田舎の本家の嫁と言うこともあり、親戚がとても多いです。そしてその子供たちに毎年お年玉を渡します。一人ずつは少額ですが、人数がすごい多いので、毎年年末には銀行で5万円分くらいを新札の千円札と交換します。
ある日、在宅リハを専門としているPTさんがSNSでおっしゃっていたことがとても印象的でした。
内容をかいつまんで話すと
「お年玉はきちんと起きて渡したい」と仰っている利用者さんのお話でした。
これだけ聞くとなんのことか分かりにくいかもしれません。私も具体的な話は伺っていないのですが、きっとこう言うことだろうなと想像しました。
普段はベッド上の生活の高齢者。大切なお孫さんとの交流もベッドの上になってきた。普段お孫さんが来る時は、ベッドの上から声をかけ、みんなが談笑する様子を眺めている。けれど、新年に渡すお孫さんへのお年玉だけは、きちんと身体を起こして、正面から目を見て、自分の手で渡したい。
些細なことかもしれません。でも年に一回の新年の大切な日に、これまで当たり前のようにやっていたことを、今まで通りやりたい。
身体が不自由になるまで気がつかなかった、毎年当たり前にやっていることの難しさ。
理学療法士さんであれば、こう言ったニーズに対して、ベッドからの起き上がりなどの練習を訓練で行い、お正月にそなえるなんてことができますね。
こう言うことが本来の「リハビリテーション」なのだと思っています。ただベッドがからの起き上がり動作の練習をすることって、あまり意欲と連動しないんですね。そして生活に落とし込まれないので例えできるようになっても、その動作ができることの価値を感じられない。
それが「孫の顔を見て、お年玉を渡す」と言う、情景を思い浮かべると、その“ベッドからの起き上がり”と言う、ただの動作が、一気に意味のあるものに変わります。
情景を思い浮かべる
生活期の支援の中で、この「情景を思い浮かべる」と言うことは必要なことと思います。
ただの動作が「情景」として描かれて初めて意味のあるものになるんですね。動作を「情景」や「物語」に取り込むことで、私たちは「生活」することができているんです。
私たちが行っているすべての動作には目的があるんです。その目的が「情景」や「物語」として見えていれば自然と生活の中に染み込んでいくんですね。
おせち料理を作る
さて、そんな話を聞いたところで私が考えたこと。私にとってお正月って?と言うこと。
特に信心深くもないので、初詣に行けなくてもあまり気にならない。朝のお雑煮がなくても大丈夫。おみくじもそこまで気にしないし・・・あ、でもあった、大切にしていることがひとつ。
それは「おせち料理を作ること」
最近ではあまりおせち料理を作る家庭も減ってきていると思いますが、我が家は毎年おせちを作ります。結構しっかりとした三段重。
自分で言うのもなんですが、私の世代ともなるとおせちを作らない人が多くなっている印象ですが、私は毎年こんな感じで作ります。本家嫁だからと言うのも理由の一つではありますが、純粋に作るのが好きだからです。
なぜ好きなのかと言うと、私が作るので、私が好きな味付けで楽しめることもですし、他のいつもの食事に比べて彩りも綺麗です。
そして、子供たちが、私の作るおせちが好きだと言ってくれるんですね。
ですから、毎年作っては感想を聞いて、それをもとに来年のレシピを改良して。
これを嫁いでから毎年しています。
おせちが作れなくなったら?
だから、私にとってお正月は「おせちを作って、家族に食べてもらう日」と言うイメージです。なので、もし私が脳梗塞などを患い、片麻痺となり、料理がままならなくなったら、それはお正月の楽しみがなくなることを意味します。
ですから、私を担当したセラピストには「おせちを作れるようにして欲しい」と言うと思います。
そう言う思いを汲み取るセラピストさんが担当になってくれたら嬉しいなと思いますし、そう言うセラピストさんとなら、辛い訓練も頑張れると思うのです。
そして、こう言う“大切にしている情景”というものは、人によって全く違います。それを聞き出せる、汲み取れる、落とし込める。それが私たちセラピストの役割なのではないでしょうか。
生活をイメージする
私たちセラピストの仕事は、生活をイメージすること。イメージして、それを再現するお手伝いなんですね。
誰にでもある、大切な生活の1ページ。再現していきましょう。
そして、今みなさんが見ている景色も、それが見られていることは奇跡なんですね。その情景を目に焼き付けて置いて欲しいなと思います。
日々の暮らしを大切に。そんなお手伝いができること。これが私の仕事の目指すところでもあります。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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