【びぃどろ講座】大人の発達障害

最近少しずつ話題になってきた「大人の発達障害」をご存知ですか?

発達障害って子供だけ、と思いがちですが、その子供たちも成長し、やがて大人になっていきます。そうしたときに「仕事」や「人間関係」での壁にぶつかることがあります。今日はそのお話。

発達障害って?

そもそも発達障害とは何でしょうか?以前のブログ記事にもしましたが(過去記事→)、発達障害とは「発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

これは先天的なものであり、大人になってから発症するものではありません。また、脳の病変ですから、100%治るものとも言えないのです。

つまり、大人になっても発達障害は残っているんですね。

発達障害の方々は、コミュニケーションに対して非常に難しさを抱えています。ですから、「仕事」などをする年齢になると、非常にたくさんの壁にぶつかってしまうのです。

これが近年話題になっている「大人の発達障害」です。

大人になって気づかれる

例えば、幼少の頃に明らかな発達に遅れがあった場合、その発達段階に合わせた支援を受けていることが多いです。しかし、幼少の頃には気づかれない程度であったり、学力は比較的良好で授業では問題がないために、特別な支援を必要としてこなかった方の場合は少し異なります

大人になるに従い、就職や結婚・恋愛など、これまでと違った意味で対人関係が複雑になります。そう言った社会的な変化の過程で、仕事や対人関係がうまくいかなくなると、「自分はどこか人とは違う」という違和感を感じたり、「生きづらさ」を抱えるようになります。そして「発達障害」というものを周囲から指摘されたり、自身が感じることにより、うつ病や対人恐怖症、不安障害などの発症に繋がることもあります。こう言った精神的な症状がきっかけで受診され、「発達障害」が発見されることも少なくありません。

今回は代表的な診断名における「困りごと」についてまとめてみましょう。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の仕事場での困りごと

自閉症スペクトラム障害はのかたにみられる特性は主に3つ。「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「興味や行動のこだわり」です。この3つの特性を持っていると、職場などでこんなことに困るのです

  • 職場会話がスムーズにできない
  • 一方的に話してしまう
  • 暗黙のルールが理解できないため、共同作業が難しくなる
  • 言葉の裏の意味がわからず、上司の指示の意味を誤解してしまう。
  • 感覚過敏により、音が多い環境では過敏に感じてしまう
  • 同じ順番での作業にこだわったりと、特定の物事への執着が強い

注意欠如・多動性障害(AD/HD)の仕事場での困りごと

これは、名前の通り注意散漫になりやすく、多動傾向の特性を持っています。この診断名の方は、仕事の時にこんな困りごとにぶつかります。

  • ケアレスミスが多い
  • 1つの作業に集中できない
  • 逆にやりたいことや好きなことに対して集中しすぎてしまう
  • 片付けや整理整頓が苦手
  • 約束や時間を守れないことがある

学習障害(LD)の仕事場での困りごと

これは、知的面の発達には目立った問題がないのに、「読む」「書く」「計算」などの、特定の事柄が非常に難しくなるものです。

学習障害もいくつかに分類されるのですが、こんな困りごとがみられます。

  • 音読のペースが早い
  • 読み間違えることが多い(特に語尾や文末)
  • 「ろ」や「る」など形の似ている文字を見分けることが難しい
  • 聴き間違えが多い
  • ひらがなで書けない文字がある
  • 数・計算が苦手
  • 時計が読めない、時間が分からないことがある
  • 図形の模写が苦手

みんなの困りごと

上記のような困りごとは、みんなが共通してあるわけではありません。ただし、少なくともこのような症状がみられる人は、大なり小なり「生きづらさを感じている」ということも事実です。

そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、その当事者の周りにいる人たちも「困っている」はずです。「どうやって仕事を教えたらいいんだろう?」と感じたり、「こういうときどうやって声をかけるべき?」と悩むこともあると思います。

本人も「悪気はないのに相手を怒らせてしまう」と感じたり、「業務の締切をなぜ守れないんだろう?」など感じる時もあると思います。本人も、周りも同じように感じているのですね。

けれど人間関係ですから、そのままではどんどん関係性が崩れてしまうことになりかねません。こう言ったトラブルが生じたらすぐに「発達障害だ!」と決めつけることはできませんが、もしかしたらその可能性もあるということを知って欲しいのです。もしそうならば、適切な対応を専門家の先生から指導してもらい、どうやって職務に当たれば良いのかを考えるきっかけが作れるかもしれません。そうすれば、こういった困りごとから少し楽になれるのではないでしょうか?

もちろん、そんな簡単には行かないよ!という意見もあると思いますが、まずは双方が知ることがスタートなのかもしれませんよ?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。