食生活をイメージする①はじめに

以前、日本訪問リハビリテーション協会機関誌に
「食環境を整える」という内容をテーマに
執筆をさせていただきました(記事)

機関誌は訪問リハ協会に所属している方々が読まれるもののため、基本的には協会に所属するセラピストの方々、とくにPTやOTに対して読んでいただきたいなと思い書いていました。

今回は、ここで描いた内容をもう少し幅広くお伝えできるようにしたいなと言う思いがあり、「食環境を整えるコツ」について内容を広げながら書いていきたいと思います。

1回目の今日は
そもそも「食環境をイメージするとは?」です

私たち言語聴覚士(ST)のおおくは
病院や施設などで勤務をし
そこで患者さんや利用者さんに嚥下訓練をする際に
そういった嚥下障害のある患者さん・利用者さんの
食事形態を決める役割を担っています
もちろん処方したり決定するのは主治医の先生ではありますが
わたしたちが評価した結果を
主治医の先生や管理栄養士さんに報告し
多くの場合はその内容を踏まえたうえで
食事内容を決定して頂きます。

ですからここで食事形態を誤った評価で決定してしまうと
患者さん・利用者さんは誤嚥のリスクがたかまるため
慎重な判断が必要とされるのです

そして食事が決定すれば、病院や施設では
栄養的・味覚的にも満たされたお食事が
本人さんの能力に合わせて提供されます

そのため、STは管理栄養士さんに対して
「こんな食事形態のものをお願いします」
と依頼するだけで、安心して評価に取り組めるわけです。

しかし在宅の場合そうはいきません
管理栄養士さんもいませんし、
調理師さんもいません
調理をしてくれるのが主婦ならまだしも
老老介護だとおじいちゃんが請け負うこともあるんです

そう、病院や施設と違い
家庭には専門家はいません
評価してくれる人はいませんし
作ってくれるひともいません
すべて家族が一手にひきうけなければならないのです。

その状態でまともな指導をすることもなく
「ムース食で~」と言ってできるわけありません。
一般的な主婦だって、ムース食の作り方を知らないんですから
高齢者や男性には本当に難しいはず。
ミキサー食だって、そもそもミキサーがない家も多いですし
以前訪問した家は
電子レンジも無いお宅もありました

そうなると
おのずと調理できるメニューや食事形態が決まってくるのです

そう、わたしたちの指導は「理想」であって
「現実」に提供されないことも多いのです。

そもそも食事を毎日提供するために
私たちは何をしているだろうか・・・
ということを考えてみます

「調理をして食べさせる」

この前にわたしたちは
調理をする人がいて
メニューを考えて
買い物に行って
・・・それから調理に移れます

食べさせた後は
下膳して
食器を洗って
ゴミをまとめる
ゴミ捨て場に持っていく
次の食事の準備に取り掛かる
・・・この流れがあります

また、買い物に行くためには
お金を稼ぐ
銀行でお金をおろす
も、必要です

また食べたら出ます
排泄のケアも必要です

介助者の生活サイクルのなかに
これらを全て取り込んで
はじめて食生活が営める

食事って、たた食べるだけで完了するものではないんですね。

そう思うと
安易に「ミキサー食で」といった指導が
なかなかできず
「この人」ではなく「この家庭」には
どんな食事が提供できるだろうか
ということを考えなければならないと
改めて思うのです

「戸別訪問」の良いところは
そんなアプローチができること

次は食事を提供する各段階について
考慮すべき点について
それぞれまとめていきます

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。