先日、びぃどろ講座の中で、『食事介助でスプーンは見るな』というお話をしました
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食事介助で使うスプーン。このスプーンの使い方を正しくするだけで、食事介助の安全性がグッと高まります。今日はその第2弾をお伝えします。
スプーンの上の食べ物の旅
食べ物は、どんな流れで対象者の方の口の中に入るのでしょうか?
介助者はスプーンの上に食べ物を乗せます。そして、それを対象者の方の口に運びます。そしてそれを対象者が唇で取り込み、口の中へ・・・。そしてモグモグ・ごっくんとなります。
みなさんそうですね。
スプーンの上の食べ物を、口に入れ、唇で取り込み、ごっくん。
唇で取り込み・・・
そう、唇で取り込むのです。
みなさん、これ、意識できていますか?
食べ物は口唇で取り込む
わたしたちがスプーンで食べ物を食べるときを想像してください。
例えばカレーライス。
スプーンにカレーが乗っている状態で口に運びます。そして上下の唇でスプーンをはさんで取り込みます。抜き取ったスプーンにカレーはほとんど残っていません。よほど熱いものの場合は別ですが、私たちは食べ物をスプーンで食べるとき、必ず上下の口唇でスプーンをはさみ取って取り込むのです。
スプーンをつかまえる
この『スプーンを上下の口唇ではさんで、食べ物を取り込む』という行動は、当たり前のことで、ほとんどの人が知っていることです。
それなのになぜ、あえてこうして書くのでしょうか?
それは、食事介助だと、なぜかできないんです・・・。
以前、『食事介助でスプーンは見るな(☆)』でも書きましたが、食事介助のときって、どうしてもスプーンの動線を目で追ってしまうんですね。その為、スプーンの上の食べ物をはさむ口唇の動きを見てないんですね。
スプーンをくわえさせることではなく、スプーンの上の食べ物が空になることが目的になってしまうんです。
スプーンをくわえさせましょう
スプーンをつかまえさせましょう
スプーンをつかまえるには?
スプーンを捕まえる方法は2つあります
1.自力でつかまえる
当たり前ですが、食べる本人がくわえることが目標です。ですから、本人が自力でくわえるを促します。これのポイントは『待つ』です。
スプーンを口に入れて、口唇が閉じるのを待つ。これが意外とできないんです。食べ物を「口の中に入れること」を目標にしてはいけません。食べ物を「取り込むこと」を目標にしてください。本人が口唇を動かして取り込む。ここを目指します。
そのため、食事介助の際に、スプーンを口に入れたら、上唇が下りてきて上下ではさみ取るまで待ちます。そして、上下の口唇でスプーンをはさんでから、引き抜くのです。
2.つかまえるのをサポートする
病気や障害により、自力で唇を閉じることができない方もいらっしゃいます。麻痺であったり、緊張であったり理由はさまざまですが、なんにしても自力でスプーンの上の食べ物をとりきれないのです。
そういう方に対しては、口唇を閉じるためのお手伝いが必要となります。一般的には介助者がスプーンとは反対の手で、直接口唇を閉じるような介助をします。
上の図からもわかるように、スプーンが口に入ってきたときに口唇ではさみ取れないところを、介助者が手でサポートしてあげることで補います。それにより口唇閉鎖が疑似的に作れ、自然な取り込みに近づけることができます。
なぜ口唇を閉じないといけないの?
わたしたちは食事をするとき、口唇を閉じてスプーンの上の食べ物を取り込み、口唇を閉じたまま咀しゃくし、そして口唇を閉じたままゴックンします。口唇を閉じなければ、これらの動きに何らかの問題が生じます。
例えば、食べ物が上顎に張り付いてしまう、食べ物が口のなかでバラバラになりうまくまとめられない、ゴックンする瞬間に空気を飲んでしまう、ゴックンする力が弱まり誤嚥しやすくなる、咀しゃくのときにこぼれてしまう、十分な咀しゃくができずに丸飲みしてしまう、(お子さんの場合)発達期に誤った食べ方を学習してしまう・・・などの問題です。
正しい食物の取り込み方をサポートすることで、安全な食事が継続できるようになります。
スプーンを口唇でつかまえて、自力で口の中の食べ物の操作ができるよう、支援してみましょう。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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