【びぃどろ日記】介護保険なんてわからない

先日、以前のご利用者さん家族からお電話がありました。この方(Aさん)は3人家族。そのうち2人が介護を必要とする状態であり、1人で介護を頑張っていらっしゃいます。

きょうはAさんとの会話について。

Aさんの背景

Aさんは3人家族。もともとはそのうちお一人が介護を必要とする状態だったのですが、もうひとりが病気を発症され、多重介護の状態になりました。Aさんは非常に熱心にお二人を介護されていたのですが、Aさん自身もご高齢であり、足腰も悪くなってきたため、泣く泣くおひとりを入所させる決断となりました。

その入所となった方が私の担当のご利用者様だったこともあり、入所と同時に私の訪問は終了となりました。しかしその後も事情があり連絡を取っていました。年末にお互いが電話し合うもタイミングが合わない、ということが続き、数カ月ぶりに今回電話がきたのです。

入所後の経過

入所後もいろいろとトラブルが合ったことは伺っていたのですが、自宅への外泊をしたりそれなりに楽しく交流を図っていらっしゃいました。ところがこの度、新型コロナウイルスの世界的流行に合わせて、外泊はもちろん面会中止となったとのこと。当然の措置ではあるのですが、ご家族としてはなんとも切なく不安になる時間となりました。

頻繁に自宅へ外泊させることを楽しみにしていたAさんは、その楽しみがなくなり落ち込んでいらっしゃる様子。そして、その分もうひとりのご家族への介護に追われるようになります・

もうひとりの要介護者

もうひとりのご家族はご高齢であり、介護保険認定もおりたため、介護保険サービスを利用しながらAさんは在宅介護を続けていらっしゃいます。

しかし、Aさん自身の年齢を思うと、すこし在宅介護がしんどくなる頃。「体調はどうですか?ケアマネさんにいろいろサービスとかいれてもらってくださいね」とお話すると、ちょっと驚きの言葉が。

Aさん

ケアマネさん?あぁ、来てくれるよ。月に1回、調査に来てくれる

ん?調査?

Aさん

そう、毎月調査にきてくれるよ。「どうですか?」って。

いろいろ相談してみていいんですよ?ヘルパーさん利用したり…

Aさん

ん?相談?

どうやらAさん、ケアマネさんのことを「調査する人」と思っていらっしゃる様子。

何を助けてほしいかわからない

高齢者の介護でありがちなのが、「困ってるけど、具体的に何に困ってるかわかんない。でもきつい。どうしたらいい?」というもの。

よく算数がわからない子どもが「何がわからないかもわからない」とか言いますよね。まさにあんな感じ。わかんないんです。何もかも。

だからケアマネさんが来てくれても、今の自分の生活を楽にする手段があるという発想がそもそもないので、なにもケアマネさんに言えない。ケアマネさんは様子を見て、書類にサインしたら帰る。

うん、たしかに「調査」と思うのも頷ける…かも?

ケアマネさんの難しさ

ケアマネさんとしては、毎月訪問し、近況を伺い、必要なサービスを考えることが求められるので、それを的確にされているのだと思います。

しかし、そもそも本人たちにとって「介護保険はどんなことができるか」という知識がないので、想像ができない。使えば楽になるのかどうなのかもわからない。そういうことが起きてるのだなと思ったのです。

どれだけケアマネさんやサービスの提供側が努力をしても、それを受け取る方々にとっては全く未知の領域であることから、イメージがわかない。そういったことからも、サービスを適切に浸透させることはむずかしいのだな、と感じます。

とはいえ、Aさんに対して私は何一つ介入する立場にはない無力な私は、ただ想いを聞いて電話を切りました。

本当は話を聞いてほしい、不安を聞いてほしい、きつい介護を助けてほしいというAさんの想いが伝わりながらも、何もできないことに悔しさを感じた直後、電話を切る際に「長岡さんの声が聞きたかったんだよ」といわれました。

なにかできることが有るかはわかりませんが、この今の殺伐とし、全国・全世界が不安にいる最中、会えない私でも力になることができているのなら、もうすこし頑張らないとなと思えたのです。

さて、明日も仕事。届けられることを毎日着実にやっていこうと思います。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。