【びぃどろ講座】視点を変えて!歩行器選び

先日担当のAさんの歩行器を選ぶ現場にお邪魔しました。歩行器の細かいことは私は詳しくないのですが、ちょっと選ぶ際に違った視点を知ってほしいな、と思える出来事があったので、今日はその話。

歩行器って?

歩行器とは、足の不自由な方の歩行をサポートする道具。形も様々で、介護保険でもレンタルも可能となるものが多くあります。

まずは一般的な歩行器はこちら

4点脚で固定になっているもの。脚の筋力が衰えた高齢者に向いているそうです。これの2脚に小さいキャスターがついたものなどもあります。

そしてタイヤなどをつけたこういったものもあります。こえは歩行器と言うより、歩行車になるのかな?

一例です

あとは病院とかでよく見るこちら。

病院内をこれで歩いている患者さんって多いよね

これは大型なものですね。

歩行器もメーカーさんによって色んなタイプがあります。タイヤの大きさや可動性、手を置く位置、大きさ重さなどなど。それぞれの特徴があるので、選ぶ際にも求める機能を専門家と一緒に相談しながら決めていく必要があります。

どんな機能がほしい?

今回私が立ち会ったAさんは、失調症状によりふらつきがある方。そのため、歩行器を使ってふらつきによる転倒を防ごうというものでした。

このふらつきというのがなかなか曲者で、とくに失調症状というものの場合、脳の指令系統の異常からふらつくため、なかなかコントロールできない部分もあります。

Aさんには担当OTさんと福祉用具業者の方がついていらしたため、お二人の話を聞きながら勉強させてもらっていました。そしてえAさんの場合はふらつきへの対応を最優先すると、すこし大型のもので重量感が有るものがよいとのことになりました。

デイサービス内でも使いたいというAさんの希望をこうりょすると、送迎車に乗せられるような折りたたみ式で、かつふらつきをカバーできる重みのあるもの。なかなかむずかしいな…と思いながらも数点試用し、最終的にこれ!というものを決定することができました。

よかったよかった。

奥さん困り顔?

後日、奥様とお話をした際のこと。「歩行器使いやすいです?」と尋ねると、Aさん自身はだいぶ歩きやすくなったとのこと。良かった。しかしなんだか奥様が困った表情をしています。

お尋ねすると、「毎日ウォーキングに連れて行くんだけど、この歩行器を車に乗せるのが重くて…」とのこと。

なるほど、ご本人さんの歩き易さや使用感を優先するあまり、それを管理する奥様の方へ気づきがなかったのか、と感じました。

奥様の車は軽自動車。最近買い替えたので、軽自動車の中では比較的大きいのですが、それでも毎日Aさんと一緒に出かけるには、荷物も歩行器もとなると結構大変です。じゃあ外では車椅子を、とも思うけれど、車椅子もどうせ重いので対して楽にはなりませんし、せっかく歩けるのだからちゃんと歩かせてあげたいという奥様の気持ちもわかります。

そんなこんなでこの歩行器を使いつつ、奥様の軽自動車にどうやって毎日乗せようか問題が勃発したのです

視点を変える

歩行器や車椅子など、移動手段として使われる道具。これらはどうしても利用する本人の身体の動きにあわせて選ばれがちです。しかし実際は、それをサポートするご家族が、負担なくセッティングできるという視点が非常に重要だったりします。

今回の場合はまさにそれ。歩行器自体をAさん自身の身体の動きに合わせると、どうしても大型になります。通所へ持っていく場合は、スタッフがそれを車に積んでくれますが、日常生活では奥様が積むことになります。

介護保険を使うという年齢から考えても、お若くはないですし、それを毎日継続するとなると負担が大きいものです。奥様が腱鞘炎にでもなったら、それこそ歩行器のセッティングやサポートだってままならなくなるでしょう。

そう考えると奥様が歩行器を積むための動作確認・指導というものが重要であると言えます。

今回は私の方で、畳んだときにどうやって抱えると楽になりそうかを一緒に検討。その後その内容を担当OTさんへ報告し、後日訪問リハの際に確認していただくことができました。

やはり介護というものは受ける側とするがわの両方の視点が必要です。両方をサポートして初めて介護が生活へと変化していくのだと思います。

ご家族がすこしでも負担なくできる介護。それを見つけるお手伝いが、今後も必要だなと感じています。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。