年齢、病気、障害などのさまざまな理由により、自力で食事摂取ができない方に対し、家族や介護者が食事を口に運ぶ。これを食事介助と言います。今日は、食事介助についてのお話です。
対象者が乳幼児であれ、高齢者であれ、何らかの理由で自力での食事摂取が難しい場合、家族などによる食事介助が必要となります。食事介助として行わないといけないこともたくさんありますが、今日は介助者がよくやってしまう間違いを1つ説明します
食事介助とは
食事介助はその名の通り、自力摂取が難しい方に対して、食べ物を「食べさせる」介助のことを言います。自力で食べることができない方ということからも、何らかの病気・障害を抱えている場合が多く、中には摂食・嚥下障害を抱える方も多くいらっしゃいます。
そして摂食・嚥下障害を抱える方に対する食事介助において、もっとも注意すべきは誤嚥・窒息です。
誤嚥・窒息を防ぐ
食事介助の際の誤嚥・窒息に対する対応の一つとして重要なのが「早期発見」です。つまり「誤嚥している」「窒息している」に、いち早く気が付けることが、「早期発見」と言えるのです。
どうやって気が付くか
では「誤嚥・窒息」にはどうやって気が付くのでしょうか?
一番は「見る」ことです。当たり前なのですが、これを徹底することが実はとても難しいってご存知ですか?
人の目線
食事介助中に、人はどこを見ているでしょうか?食べている人の顔?いえいえ違うんです。
スプーンを見ているんです
え?意外でしょうか。これ、実はとても多いんです。
食べさせるときは必ず口元を見ているんですが、食べさせたら次の一口の準備をしようと、手元を見てしまうんです。そう、スプーンの動線を目で追ってしまうのです。
上図でわかるように、食事介助者の心理として、スプーンの上のものを見てしまう習性があります。こうなると、口に取り込まれた食べ物が、はたして「もぐもぐ」や「ごっくん」されたかを見逃してしまうことになるんですね。
よく見よう
口に食べ物が入るということは、その瞬間から誤嚥・窒息のリスクがあるということです。ですから、食べ物を口にいれたらまずは見ましょう。そして口の動きを見ましょう。それだけで「誤嚥・窒息」に気が付くことができるんです
モグモグを見よう
モグモグを確認しましょう。噛めていますか?回数が少なくないですか?こぼれていないですか?唇を閉じて噛めていますか?噛めない食事は窒息の原因となります。刻んだり軟らかく炊くなどの配慮が必要となります。
ゴックンを見よう
ゴックンとしましたか?ゴックンがゆっくりですか?むせていないですか?ゴックンは見ていないとなかなかわかりにくいものです。喉仏の上下運動で判断をしますが、男性ならまだしも、女性には喉仏があまりないのでわかりにくいのです。これも毎回見ていると、何となく癖や特徴が分かるようになり、見られるようになります。
飲み込むのが確認できてから、次の一口を口に入れましょう。
呼吸を見よう
ごっくんしたら、呼吸を少し見てください。人は飲み込むときには息を必ず止めています。そのため、ゴックンが上手くできない方の場合呼吸が乱れることがあります。息が荒くなっていないですか?ゼロゼロとたんの絡む音はないですか?また、窒息はしていないですか?
毎日見ることで
日々見ていると、昨日との違いに気が付くことができます。普段との比較ができるようになると、常が生じた場合はより気が付きやすくなります。また食事形態も、「こういうのは噛みにくいかな?」「飲みにくそうだな」という気づきになります。
こういう気づきがあることで、誤嚥を予防する効果もあるのです。
食事介助中にはスプーンを見ずに口を見る。当たり前のようですが、意外と意識しないとできないものです。
まずは顔を見て、美味しいねと声を掛け合ってお食事してみてはいかがですか?
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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