【びぃどろ講座】聴こえないフリで障害者手帳?

誰でも一度は経験したことがあるはずの聴力検査。あの検査、「音が聞こえたらボタン押してくださいね」って言われるけど「ピーピー」やら「ポーポー」やら聞こえるけど、あれってどんな意味があるの?

今日はそのお話。

聴力検査したことありますか?

みなさん誰でに、学校や職場の健康診断で、聴力検査を受けたことがありますね?赤青のヘッドホンをつけて、音が聞こえたらボタンを押す、あれです。

もちろんあれも聴力検査ですが、実は最近は、赤ちゃんも生まれたときに聴力検査を行います。もちろん生まれたばかりの赤ちゃんは、ボタンを押すことができませんから、脳の反応などをみて聞こえに異常がないかを、大まかに見極める検査になります。

この頃の検査は、あくまで「中等度以上の難聴」を見つけるためのものですので、成長する過程で、繰り返し検査を行うことで、軽度の障害であったり、左右差や後天的な異常を発見する必要性があるのです。

聴力検査

さて、一般的な聴力検査のお話に戻りましょう。あのヘッドホンをつけて、音が聞こえたらスイッチを押すやつです。

あの機械は「オージオメーター」と言います。
オージオメーターではとても低い音から高い音まで、複数の種類の音の聞こえをそれぞれ測ることができるようになっています。

それを全て検査するのは時間がかかるので、健康診断などの簡易検査では「高い音」と「低い音」の2種類の音だけを検査します。この「高い音」が「ピーピー音」で、「低い音」が「ポーポー音」です。

なぜこの2種類の音なのかと言うと、「低い音」は私たちの会話の声の高さに近いこと、「高い音」は老人性難聴などで、最初に聞こえにくくなる高さがこの音であることが理由です。この高い音の聞こえなどは、会話などではあまり使用されない高さであることから、聴力低下の初期には気がつかれないことが多く、さらには治りにくいとも言われているため、できるだけ早期の発見と対応が必要となります。

聞こえないふりできないの?

それにしても、耳の検査って、聞こえないふりしちゃうことできないのかな?そうしたら、聴覚障害者のふりして障害者手帳もらって、悪いことできるんじゃないのかな?

な〜んてこと、思いませんか?

けれど実際はそう甘くはありません。例えば私たち言語聴覚士は、この聴力検査の手技について、大学や専門学校の授業でみっちり習うのですが、もちろんこの「聞こえないふり」の見抜き方、というものも習っています。

ちなみに、この聞こえないふりをすることをで、聴覚障害があると診断受ければ、補助が得られたり、障害者手帳を受給して減税などの恩恵をうけることができるため、悪用をする人がいてもおかしくありません。

しかしながら、私たち検査をする人間は、そういった方を『見抜く眼』を持っており、検査結果をもとに分析を行います。聴力検査後に出る図を『聴力図』と言いますが、この聴力図が「聞こえないふり」特有の聴力図になっていないか、不自然な型になっていないか、などを見ていきます。ということからも、そう簡単に「聞こえないふり」を貫くことはできません。

原因不明の難聴

とはいえ、本当に聞こえに関わる部位に、明らかな障害がないにもかかわらず、聴力が低下するものがあります。それを「機能性難聴」と言います。このうち、ストレスによるものを「ストレス性難聴」、ヒステリーによるものを「ヒステリー性難聴」と言います。

近年では学童期の発症が増えており、家族、友人、先生などとの心理的葛藤、学校、家庭などの環境におけるストレスが原因で、ストレスから逃避するために難聴が発生する例が増えています。

基本的には両側同時に現れ、聴力検査の結果が悪くても、日常会話には支障が少ないことが特徴です。学童期の心因性難聴の場合では、学校健診で初めて発見されることが多くなっています。この場合、本人はまったく難聴に気づいていないこともあります。

難聴が発見された場合、まず器質的な障害がないことを、十分理解することが重要です。定期的に聴力検査を受け、様子をみます。さらに、原因と考えられる精神的ストレスの負担を軽くするような生活指導や、必要に応じて心理療法を精神科医などで受けます。

まとめ

聞こえを悪くする原因は様々。早期に発見し、適切に対処する。これはどの病気も同様ですね。

耳は替えのきかない器官です。大事にしていきましょうね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。