「授業中、出歩いてしまいます・・・」
先日小学生のお子さんについての相談を受けました。そのお子さんは、いわゆるグレーゾーンと言われるお子さんで、普通学校の普通学級へ通っています。ただし、なかなか集中して授業が受けられない、授業への配慮があれば集中できるが、その配慮の内容が担任の先生と共有できない。さらに、授業に集中できないため、授業中に出歩いてしまう。テストも白紙で提出してしまう・・・。本人に尋ねると「だってあっち(教室の外)の方が楽しいから」と言うというのです。
親御さんの心配は
「楽しい方へ逃げる癖がついたら、将来、大丈夫かな・・・」
とのこと。
発達障害って何?
そもそも発達障害とは何でしょう?
発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
発達障害の割合
文部科学省により2012年に全国の公立小中学校で約5万人を対象にした調査結果では、支援学校や特別支援学級ではなく、通常学級に通う児童のうち、教職員により見立てたデータとして発達障害の可能性があるとされた児童は、全体の6.5%との結果になりました。つまり、”発達障害の可能性のある”とされた児童生徒は、1クラスに2人程度いるとのことになります。(※教職員などが見立てたデータであり、医師の診断を受けた割合が6.5%ではない。)
発達障害に対する合理的配慮
こうして発達障害というもの自体が決して珍しいものではないということが浮き彫りとなり、2016年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。そこでは、障害のある人への不当な差別的取り扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めています。
この「合理的配慮」とは、障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者や学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことで、障害のある子どもに対し、その状況に応じて学校教育を受ける場合に個別に必要とされるものであり、学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないものです。
聴覚障害のお子さんに、聞きましょうとは言わず、聴覚を補いながら教育の提供がされます。
視覚障害のお子さんに、見ましょうとは言わず、視覚を補いながら教育の提供がされます。
それと同様に、発達障害のお子さんに対しても適切な配慮をしながら教育を提供するよう努める、これが私たち大人に課せられた義務なのです。
今できる『配慮』は何か?
授業を抜け出すお子さんに対し、それを許容したら『将来』大丈夫だろうか・・・。何でも逃げる大人になるんじゃないだろうか・・・。
この心配はよくわかります。きちんと授業を受けられる子になってほしい。それが普通の親の願いです。
でも
10年、20年先のまだ見えない『将来』を想像するより
『今』を見ましょう。
だって『今』行動すれば、『将来』は変わります
そのお子さんの特性により、授業に集中できない理由があるなら。更に言えば授業を理解できない理由があるなら、合理的配慮を求めることは必要です。そのお子さんの場合、黒板の板書ができないが、手元の教科書を写すことはできるとのこと。それであれば、配慮の方法が見えてきます。
❝『配慮』する・される❞を当たり前に
このように、適切な『配慮』が受けられれば、「私は社会で生活できるんだ」という経験を重ねると、母子ともに成功の体験となります。これは本人の自信となります。そして、この経験を繰り返すことにより、どういう配慮があれば生きていけるのかを学ぶことができるのです。
そして今は親の庇護下にあり、親が配慮を学校側へ求めることになりますが、成長とともに、自分に適した配慮のパターンが理解できるようになると、自力でその配慮を求められるようになります。問題解消を自力で達成できるようになれば、充分一般社会での生活が営めるようになるのです。
発達障害などにより、将来の不安を抱えるご家族は少なくありません。しかし見えない将来もですが、まずは目の前の問題解消する。その解消できた経験を通して、特性や配慮の方法を理解し、関係者で共有する。
合理的配慮を求めること、求められる側の対応はまだ社会的に確立できているとは言えませんが、まずは「適切な配慮があれば、社会に順応できる」という点を、周知していく必要がありますね。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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