【びぃどろ講座】その訓練。通う必要ありますか?

先日、戸別訪問のご利用者様からちょっとした相談が。「主治医の先生から訓練に通うように言われたんですが、行ったほうがいいですか?」というもの。うーん、どうかな?

今日はそのお話。

主治医の先生からの提案

このお子さん、Aちゃんは、いわゆるリハビリは私の戸別訪問だけを受けているお子さんです。PTさんやOTさんにつながる前に、ご縁があってわたしと繋がり、私の訪問で身体機能面などもある程度フォローできていることもあり、お母さんも『びぃどろ1本でいこうかな』とおっしゃっていました。

私としては、その時の発達状況や医療的ケアの状態から積極的なセラピストの介入を要していなかったため、相談員の手配だけはすぐに提案し、しばらくは必要時に声をかける方向性で様子を見ていました。

Aちゃんは非常に発育も良好で、ご家族も適切な関わりができているということもあり、いわゆる療育は必須ではない状況で生活ができていました。

そんな中、主治医からの「訓練に行こうか?」の提案。さて、どうする?

訓練に通うこと

訓練や療育に通うということ。これは「障害をもつ子には訓練を」ということはわかります。ソレが一般的なんだろうなというのもわかります。

でもね、連れていけるか?という問題がでてくるんです。

たとえばママが、働いていたら?訓練をしてくれる病院や、療育施設はほとんどが平日です。ですから、平日に仕事をしているママだったらほぼ連れて行くことはできません。また、小児領域の訓練は混み合うことが多く、予約の希望が通りにくいのです。

ちょうどこのAちゃんも同様で、パパもママもフルタイムで働いています。そうなると、連れていくのは現実的とはいえないよね〜・・・。

訓練や療育に通うことのメリットと、それに伴う保護者の負担を天秤にかけたとき、本当に必要性がどこまであるのかを考えなければいけません。

その上で最もご家族にとって最良な支援を受けたほうがいいな、と感じます。

結局どうしたの?

さてAちゃんへはどうアドバイスしたのかと言うと…

歩行ができるようになったら靴とかインソールの相談をPTさんにしましょう。あと◯◯の部分の筋力が弱いから、そのあたりのトレーニング方法とかを教わるといいですね。
そして、手指や視線の動きがよくなったので、OTさんにはそう言うところを見てもらいましょう。

でも

必要度が高いわけではないので、主治医の先生と相談して、それでも通うなら頻回に通うのはやめましょう。ママの負担が大きすぎるから、せめて1〜2ヶ月ごとにして、セラピストの先生に「家庭で何をしたらいいかの指導をしてください」と言って通うこと。そのためにもおばあちゃんとかが連れて行くのではなく、ママが行ける頻度にすること。

としました。

Aちゃんは戸別訪問も、メール相談も活用できている方なので、これで必要十分な支援になるんじゃないかな?と思っています。

必要十分であること

この業界にいるとよくあるのですが、「こどものために」と言われると、ママは何でもやらないといけないという呪縛にかかります。ここで「訓練の回数をもうすこし減らしてください」なんて言ったら、子供のことを優先していない親と思われるんじゃないか?という不安が拭えません。

「こどものため」を免罪符にしてはいけないのです。

あくまで「家族のため」である必要があります。

支援をする人たち、ご家族ももちろんですが、「Aちゃん」を見るのではなく、「Aちゃん家族」を見てほしいのです。

「個別」支援より必要なこと。それは「戸別」支援なのです。

「個別」を優先すると家族に負担がかかるのであれば、そこは見直さなければいけません。だからこそ「戸別」を支援する仕組みが必要なんですね。

リハビリテーションなんかは特にそうですが、「個別対応」を主軸として制度が成り立っています。でも本当に社会が求めていることってそう言うことなんでしょうか?「戸別対応」して、周囲が「個人」を支えることができれば、私達のような専門職の介入なんて、最小限でいいのかな?それこそ必要十分な関わりを見つけるほうが、きっとよっぽど家族のためになるんじゃないのかな?なんて思うのです。

「個別」ではなく「戸別」

みなさんも一度、考えてみませんか?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。