【施設指導】食事量減らしました!

わたしが食事指導をする方の多くが、肢体不自由児(者)です。彼らは一般的な健常者と食事量や体重などの考え方に合わせた指導が行なえません。今日はその話。

栄養量を減らしました

先日指導に入った施設の看護師さんから「あ、Aさんの栄養量を1日150kcal減らすことになりました」とご報告。「はーい、ありがとうございます」とお返事したものの、あれ?この方の1日の摂取栄養量ってどれくらいだったっけ?と思い、記録を見返すことになりました。

1日の摂取栄養量がそもそも650kcal(日)程度でした。え?ということは1日500kcal程度まで落とすってこと?大丈夫?

ちょうど目の前に管理栄養士さんがいたので、二人で話し合うことに。そもそも500kcalってどれくらいでしょう?だいたいコンビニなどのお弁当1食分くらいかな?と思います。そうなるとそれだけで過ごすAさん。本当に大丈夫かしら?

必要な栄養量

Aさんの性別や年齢から考えたばあい、普通ならもう1000kcal摂取してもおかしくありません。なんならもっと食べても大丈夫。でもAさんはここまで制限することになったのです。はてさてその背景は?

以前にも記事にしたことがあるのですが、「全介護」の「重度障害者」であるということが大きなポイント。

そう、母親の介護の限界値があるのですね。体重が増加することで、主な介護者である母親が抱きかかえることが難しくなります。そうなるととたんに家庭での生活ができなくなります。家庭での生活ができなくなるということは入所を意味します。やはり親子ですから、簡単に入所に踏み切れる訳ありません。ですから、家庭で生活するためのギリギリのラインというものがあるのです。

体重が増えた理由

そんなわけで、体重増加を懸念して、栄養量を制限することになったAさん。確かに数字上のカロリーは非常に低いのですが、体重が増加したならしょうがない・・・かな?どうでしょうか?

この体重増加。本当に栄養からくるものなんでしょうか?むくみは無いのかな?腎臓などの病気を併発していないかな?など、心配な点がたくさんあります。まずはそういった、体重増加の原因が他にないのかを見極める必要性があります。そのうえで、「やはりカロリーが多い」ということでしたら、栄養量の見直しとなるでしょう。

このAさんについてはもちろん主治医の先生がついていらっしゃいますし、定期的に受診もされています。さらには血液検査なども定期的に行っており、栄養不足や内科疾患の併発の可能性は低いとの判断となりました。そのため、栄養量を制限する結果となったんですね。

栄養不足なのかどうか

栄養不足かどうかについてはわからない分もあります。重度障害者の場合、てんかん発作や筋緊張によるエネルギーの過剰消費も起きますが、寝たきりである場合、実際のエネルギーの消耗量というのは簡単に計算式では出せないことが多いのです。

ですから、これが正しいか正しくないかは、やってみないとわからない、という状態なのかな?と考えられます。

いずれにしても関わるスタッフに対して私ができることは、「内科疾患から体重が増加することがあるので、栄養量を減らしても体重増加が制限できないなら、再度受診を勧めてください」とお伝えすること。

私が日頃見ることが出来ない方だからこそ、身近なスタッフが多方面のリスクを知っておくことが非常に重要です。

自分で抱え込まず、自分がいなくても平等に対象者さんが守られる環境を作ること。コレが施設指導の重要なところだったりするのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。