モグモグの発達がゆっくりなお子さんについて、なんとか噛める力を育てたい!と日々奮闘しているお母さんが多くいらっしゃいます。
しかし、噛むことを育てるためにしていることが、実は逆効果になっていることがあるのです。
今日は、『モグモグ練習の勘違い』についてお伝えします。
勘違い①固いものを食べる
昔から固いものを食べれば歯が育つ、なんて言いますね。ですから、離乳中期食くらいだけど、わざと後期食のものを食べてもらったら、噛むようになるんじゃないかな?と思いがちです。
しかしそうはいきません×
本人の能力に合っていない固さのものを上げるとどうなるか・・・。
なんと「丸飲み」してしまいます。
一見、モグモグと口が動いてあたかも噛んでいるかのようですが、数回潰したら飲んでしまいます。これではモグモグの力は育まれません。
やはり本人の能力に合った固さのものをあげましょう。
噛まずに飲めるペースト状→舌で潰せる→歯茎で潰せる→簡単に噛める
この段階を飛ばさないように、食事のステップアップをしてくださいね。
勘違い②「もぐもぐするよ~」と言う
口に食べ物が入ったとき、思わず「もぐもぐ」と声を掛けますね。しかしこれも噛むことにはつながりません。ましてやお子さんが「もぐもぐ」と真似をして声を出してしまった場合、食べ物を口に入れたまま話すことが、楽しくなって噛むどころじゃなくなってしまいます。逆に、噛めるようになると、この言葉には反応してくれます。
つまり、噛めるようになる前のお子さんの場合h、「もぐもぐ」の音遊びにならないよう、しっかりとゆっくり噛むことに、集中させてあげましょう。
勘違い③左右の奥歯に交互に乗せる
一番困る勘違いがこちら
「左右の奥歯に交互に乗せる」
せめて1回だけでも噛んでほしいという思いから、奥歯の上に食べ物をおいて噛ませるようにしている方も多くいらっしゃいます。
実はこれも、練習の時期を誤ると逆効果となります。
さらに言うと、早い時期にやると噛めないどころか、悪い癖をつけてしまうという悪影響を及ぼすことがあるのです。
ではどういうタイミングで始めればいいのでしょうか?
唇の動きを見よう
時期を見定める判断材料はいくつかありますが、唇の動きの発達が一番わかりやすいのでおススメです。
①開閉
唇の動きの発達は、生まれてしばらくは「開閉」のみの動きです。
②引き
徐々に発達し、両口角を引く動作が生まれます。これは舌の奥の方を使って、食べ物をノドへ送り込むときに出現する動きです。
③左右バラバラ
そして徐々に両口角をバラバラに引く動作が出現すします。これは舌の左右に食べ物が移動し、徐々に歯茎で食べ物を潰せるようになっている時期です。
④ねじれ
最後に口角がねじれるような複雑な動きが変化します。私たちがガムをかむときに出現する動きです。これが咀嚼の完成時期です。
左右の歯の上に食べ物を置く時期は?
では、もぐもぐ練習をするために、食べ物を左右の奥歯の上に置くのに適した時期はいつでしょうか?
それは
③です
逆に、まだ両口角が左右対称の動きをしている時期に、歯茎を使わせようとしてしまうと、その食べ物をうまく動かせずに丸飲みしたり、不要な動きを学習する可能性があります。不要な動きを1度学習してしまうと、それを修正するのはとても大変です。
ですから急ぎ足での練習は控え、能力に合った食べ物をあげたり、食べさせ方を教えてあげましょう。
先取り学習ということばもあるため、そのイメージで、少し難しいことをさせる方が、何事も早く覚えるのではないか・・・?そう思う方も多いでしょう
しかしそれは実は誤りで、その時期の能力にあったことを行わなければ、不適切な動きを学習してしまい、かえってそれが悪影響を与えてしまいます。
急がば回れ
早いステップで進もうとせず、ゆっくりと着実に進めることが、一番の支援になるんですよ。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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