【びぃどろ講座】車いすでの目線を想像しよう

今日は通所指導に行きました。ちょうど利用者さんを1つのフロアに集めてイベントをする日だった関係で、沢山の方があつまりました。中には椅子に座る方、マット上(床)に座る方、車いすに乗っている方など、さまざまです。

沢山の姿勢の方がいる場合、どうやって座ってもらったらいいのかな?彼らの視線の先を想像してみましょう。

今日のイベント

今日は、退職される職員さんへ、各フロアの利用者さんが色紙と花束を渡すことになっていました。そんなわけで全員集合♪

退職者を囲むようにして、みなさんが扇形に座っています。初めはゆとりが合ったので1人ずつ様子を見ながら着席していただいたり、車いすを並べていたのですが、徐々に人数が増えると車椅子だらけになってしまい、なかなか希望どおりの位置につくことができません。

肢体不自由児の車いすは大型だ

肢体不自由児の車いすは、一般的な車いすと違い、やや大型です。そして、身体を倒すことで呼吸や飲み込みをスムーズにするなどの効果があるため、背もたれを倒せるようになっているものが多くあります。更に姿勢をより安定させるために、手を置くためのテーブルやロールクッションがついていることも多くあります。

テーブルがついていて、かつ背もたれを倒せる車椅子って、実際どうなっているか想像できますか?

前後にとても長くなり、狭いスペースにはなかなか居られません。方向転換も足をぶつけやすくなるなど、少し難しくなります。

そして、ほら、本人はどこを見ているでしょうか?

天を仰ぐ視線

普通の車椅子しか見たことが無い、という方には想像できないかもしれませんが、実は背もたれを大きくリクライニングした車椅子に乗っていると、本人は天を仰ぐような姿勢となり、正面を見るのが難しくなります。ちょっとリクライニングしただけなら問題ないのですが、オーバーテーブルごと倒すタイプのもの(リクライニングではなくティルトと言います)になると、正面に目を向けても、テーブルが邪魔して見ることができません。うーん。見えない。

この姿勢では、視野が遮られてしまい、活動への参加に対してちょっと障壁となることがあります。さて、そんなとき、どうしたら良いでしょうか?

身体的な事情から、リクライニングなどの機能を活用したほうが良い方は、多くいらっしゃいます。ですから、活動を楽しむためにも、身体に負担のないような姿勢をキープする必要性があります。

背もたれは起こせない。けれどテーブルで視野が遮られる。さて、どうしよう?

楽に見られる位置

そんなわけで、車いすを正面で配置することを止め、横向きで並んでもらうことにしました。こうすれば視線を少しずらすだけで視覚的にも楽しむことができるようになるのでは?と目論んだところ、コレは成功♪

麻痺などの関係から、左右のうち、より向きやすい方というものもありますので、それを考慮して並んでいただきました。

中央に立つ、退職される職員さん。彼を囲みながらみんなで歌ったりあそぶ時間があり、それを利用者さんみなさんで楽しむことができました。

とはいえ、途中からだんだん人数が増え、フロアの面積の関係から思った通りの場所につくことが難しくはなりました。けれどそういうところに配慮する、というのは私達のように立っている者からすると、なかなかイメージできないものです。

普段見ないものを想像する。そして、その方の見えている世界を想像する。そして、その方の感じられる世界を支援する。

こういう支援が日々あたりまえにできる。そんな環境作りをお手伝いできればと思います。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。