摂食・嚥下障害者に対する食事介助指導の際に頻繁に相談を受ける内容が、「どうなったら食べるのやめさせたらいいですか?」というもの
今日はケアスタッフの立場から考える、食事の中止基準について紐解きます。
絶対に中止するとき
そもそも食事を開始してはいけない状態は以下の通り
- 覚醒しない・意識レベルが低い
- 嘔吐している
- 呼吸状態が悪い
- 全身状態が悪い
食事を開始するが、中断すべき状態
- 呼吸が明らかに乱れる
- 嘔吐する
- 激しくむせる
上記の状態の場合は、食事自体のリスクが高まります。摂取量や時間に限らず、中断しましょう
食事量を決める
明らかな誤嚥などはないけれど、このままの食事を続けて良いのか悩む・・・そういう方も多くいらっしゃいます。その場合の食事の中止基準はあるのでしょうか?
食事介助の基礎を学ぶ
まず大前提として、ケアスタッフの方は食事介助方法の基礎を学ぶことが必要です。誤嚥とは何かから始まり、姿勢や1口量、介助速度、食事形態などの一般的知識は学んでほしいなと思います。その上で、適切な判断をしましょう。
感情に飲まれない
ケアスタッフの立場の場合「安全」は最優先です。「食べさせてあげたい」この感情に流されすぎず、冷静に判断しましょう。
また前述のように「基礎を学ぶ」ことにより「誤嚥が怖い」という感情に流されすぎないようにすることも重要です。
変化に気がつく(食事中)
食事時間は何分が良いですか?という質問をよく受けますが、答えはありません。おおかた30分程度を目安としていますが、それ以下でも難しい人もいますし、それ以上でも食べられる人もいます。
ただし、食事開始直後や15分前と比較して、変化がないかを注意してみましょう。
- 痰の量
- 唾液の量
- ゴックンのタイミング
- 口の動き
- 汗
- 呼吸
これらに変化が出始めたら、食事中止検討しましょう。
変化に気がつく(長期的)
食事が適切かどうかを見る指標として、長期的な変化を見ていきます。
- 体重
- 血液検査
- 尿量・色・排尿リズム
- 便の性状・排便リズム
- 食事にかかる時間の変化
方針の共有
ケアスタッフだからこそ、家族以上に冷静に、現状を把握する必要性があります。誤嚥や窒息などの事故があってはならない。これは家庭でももちろん同じことなのですが、ケアスタッフという“他人”だからこそ注意する必要があります。
食べさせることへのリスクが高すぎる場合、食事量を減らす必要があります。そこをまず共有し、結果起きうる体重、排泄、栄養状態の変化を意識します。そして変化が生じた場合、これを再度共有し、方針を決めましょう
まとめ
『共有する』という作業を繰り返すことにより、関係者全体で方針を決めることができ、変化への気づきや、感情に流されないという状況を作ることができます。ケアスタッフのように組織として関わる場合、食事に限らず、支援方針を関係者と共有しておくことは、自信につながります。その自信が、最終的に冷静な判断を生み、本当に必要なケアを見定める眼に繋がるのです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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