食生活をイメージする⑥~実際の調理指導~

食生活をイメージする。6回目。
実際の調理はどうするか・・・についてです

※過去記事はこちら
①はじめに⇒
②だれが調理する?⇒
③なにを食べる?⇒
④買い物⇒
⑤調理する⇒

わたしは訪問看護ステーション勤務の頃から
調理指導を積極的にしていました
訓練の対象者はそっちのけで
ご家族と台所に立つこともしばしば・・・

もちろん
いわゆる「嚥下訓練」をしないと
いけない場合も多々あります

しかし
嚥下障害があればこそ
いつ改善するかわからない嚥下能力の回復に
時間をかけるより
すぐに変えられる
食事形態を整えることを優先することで
とりあえずは
次の訪問日までに安全に過ごしてもらえる・・・
そういう考えも必要です

ですから私は
家庭の食事を安全にすることに
重きを置いてきました

ミキサー・ミルサー・ブレンダー
などがあるお家は
調理指導の幅が拡がります

ミキサー食・ムース食(ソフト食)が
容易に作れるからです

ミキサー食の作り方は
ただミキサーをかける・・・
ということでほぼ間違いはないのですが
やはり
食材や料理そのものの固さの
影響を受けることが大きいので
事前に炊くものは
軟らかく炊いておく必要があります

ミキサーをかける際には
水分がないと回らないため
水分を足すのですが
ただの水分では
味が薄まってしまい美味しくないので
出汁やソースを混ぜることで
味が整います(過去記事)

ムース食(ソフト食)を作る場合
ゲル化剤を使用することがほとんどですが
一般的なゲル化剤は
加熱⇒冷却を要するため
非常に手間と時間がかかることと
大袋タイプが主流であることから
家庭での使用にはやや不向き。

そのため
ミキサー撹拌タイプの
特殊ゲル化剤を使用することを勧めています

このゲル化剤
お茶のとろみ剤としての使用にも
おススメです

と、いうのも
とろみ茶は”中間のとろみ”くらいから
正直あまり美味しくなくなります・・・
もちろんメーカーさんも
なるべく味を損なわないよう
とろみ剤の開発をしてくださっていますが
でもやはりドロッとして
美味しくなくなります・・・
個人差ですかね?

そのため、とろみ剤の使用量が多い人は
とろみ茶ではなく
ゲル化茶を勧めます

いわゆるお茶ゼリーほど
しっかり固めなくてもいいんですが
あきらかに
ゲル化剤でとろみをつけたほうが
お茶として美味しくなります

しかし特殊ゲル化剤は
ミキサー撹拌が必要なので
お茶を飲む度に
ミキサーを出すのはちょっと手間・・・

こんなマドラーを使って
手混ぜでも一応できますが
ちょっとプルプル感が劣ります

ですから私は
100円ショップのこれ

150円の簡易ミキサーですが
ゲル化茶を作るには十分♪

あと最近こんな商品も発見

こちらは電池もいらないので
便利かも?

洗いやすさ
使いやすさ
継続しやすさ

など、いろいろ考慮して
一番使いやすいものが見つかるといいですね

次にお粥・軟飯について

最近は炊飯器にもお粥モードがあるので
作るなんて簡単♪
・・・とはいきません(;^ω^)

だってご家族のご飯も同時に炊かないと
一緒にいただきますができないからです

対象者用のお粥・軟飯と
家族用の米飯を同時に炊く

案外気が付かないですが
とっても大切な視点です

方法はいくつかあります

①冷凍する
お粥か米飯のどちらかを
事前に炊いておいて冷凍
一般的ですね
ただし解凍後は味が落ちるのと
お粥の場合、形態が変わるので注意です

②同時に炊く
炊飯器1台で同時調理という方法もあります
主に専用の道具を使うか
パッククッキングです

専用の道具は
これも100円ショップに売っています
ちなみにレンジでお粥が作れる道具も
売っています

ただしいずれも1回で炊ける量がかなり少ない・・・
離乳食用の商品が主です

そのためパッククッキングを指導することもありますが
これについては長くなるので別記事で・・・

③2度炊き
これが良い方法かどうかは別として
現実的にこれが多い印象です

炊きあがった米飯を
鍋に取り
お湯でしばらく煮る

これが一番現実的には楽なんです
主婦である私もそう思います

ですから
2度炊きをどれくらいしたらよいか
芯が残っていないか
なぜお粥や軟飯が必要かを理解してもらい
適切な形態になるまで
炊くように促すことが必要です

食事形態の理想を求めても
生活に取り込むのは大変です

調理の手間
洗い物の手間
食べさせる手間
他の家族の食事との兼ね合い
介助者自身の食事・・・

これらをしっかりイメージする

そして
調理する人が
負担なく調理できる

それが食生活を維持することに
つながってゆくのです

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。