突然ですが、脳死と植物状態って何が違うかご存知ですか?今日はもしもの時を含めた、このお話です。
運転免許証の裏を見て
運転免許証をお持ちの方はご存知と思いますが、裏面をご覧いただくとこんな文章が。
ここに万が一の事故などの時に、自分の意思を表明できるように「脳死」の場合の対応について書いてあるのですが、皆さん、脳死がどんな状態かご存知ですか?
人が亡くなったとわかるとき
1996年まで、日本での「死」の判定は、心臓と呼吸が停止してえ、瞳孔が散大しており、医師が「もはや回復の見込みがない」と確認した場合にのみ判定されてきました。
しかし、心臓が停止した後では臓器移植がうまくいかないことが非常に多く、脳死の段階での臓器提供について検討されるようになりました。
その結果、1997年に臓器移植法が制定され、心臓停止前の脳死段階で臓器移植をすることが可能となったのです。この脳死判定は、移植に無関係でかつ十分な経験と知識を持った2名以上の医師が厳密な検査を行うことで判定できるものとしました。
脳死判定の基準は?
脳死の判定を行うことができるかどうかについてはいくつかの条件があります。
脳死と判断することが困難な症例については、判断からも除外されます。例えば、急性薬物中毒などは類似した症状が引き起こりやすいため判断しません。また15歳未満も除外対象です。知的障害などにより、本人の意思確認が不明確な場合も除外となります。
これらの除外基準を守った上で脳死は以下の方法で判定されます。
- 深昏睡
- 瞳孔の固定・瞳孔径が左右とも4mm以上
- 脳幹反射の消失
- 脳波平坦
- 自発呼吸の消失(①〜④が確認された後に判定する)
この脳死判定はいくつかの前提条件をクリアし、かつ除外例に該当しない人に行われるものです。倫理的な側面もあるため、慎重に行う必要があります。
植物状態は?
ではこれに対して植物状態ってなんでしょう?
植物状態とは、脳死とは異なります。植物状態は、大脳の機能が停止している場合が多いのですが、脳幹は活動を続けています。つまり、脳死の場合は脳幹も機能停止をしていますが、植物状態の時は脳幹は生きています。
脳幹とは?
脳幹とは、下図の通り大脳を支え、背面には小脳があります。この脳幹には、生命維持に必要な昨日の中枢があり、大脳から発せられる全ての命令や、大脳に向かう情報の通り道になっています。
生命維持に必要とはどういうことかと言うと、呼吸・心拍・血圧などの循環、さらには発声や咀嚼・嚥下などの機能も司っています。こう言った生命を維持する上で必要な部分の中枢が、この脳幹にあります。
ですから植物状態の場合はこの脳幹が生きているため、呼吸もあり心臓も動きます。意識がないのですね。
そして脳死の場合はこの脳幹が機能しなくなることをいうのです。
脳死を死とするか
運転免許証の裏面にもあるとおり、近年ではこの脳死状態になった場合どうしたいか、という意思を尊重しようという動きが出ています。みんなが積極的にこれに答えるわけではないと思いますが、自分の万が一に備えて考えておくということは非常に重要です。
そしてこの意思決定は、何を選んでも正解や不正解のあるものではありません。ただし1つだけ言えるのは「ご家族と話し合っておこう」ということです。
この臓器提供などの大切な事柄は、家族にも伝えていて欲しい。そして、自分はどうしたいか、どうして欲しいかをきちんと家族に伝えていて欲しいなと思います。だって脳死であっても大切な家族であれば、臓器提供はしてほしくない!と思われることもあると思います。
家族と万が一について話し合っておく、これはとても大切なことです。死について話し合うということは、生について考えることです。
一度大切な方と、そんな話、してみませんか?今よりずっと大切な方々との時間が愛おしくなるはずです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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