【びぃどろ講座】ダウン症の発達指導

私の小児領域の利用者さんのうち、最も多いのが、いわゆる脳性麻痺などの重度障害のお子さんです。そして、次に多い診断名。それは「ダウン症」です。今日はそのお話。

ダウン症って何?

ダウン症は、正確にはダウン症候群と言います。これは、人の体にある染色体のうち、21番染色体が通常より1本多く存在し、計3本(トリソミー症)になることで発症します。遺伝子の病気では最も多いと言われています。

ダウン症の症状

一般的には、身体的発達に遅れが認められたり、軽度の知的障害を持つことがほとんどです。また、顔つきにやや特徴があり、顔立ちからも比較的認知されやすい病気と言えます。知的発達については個人差が非常に大きいため、適切に評価して、その方の状態にあった支援が求められます。

ダウン症の発達指導

さて、私は、ダウン症児さんを多くみていますが、どんな訓練をしているかについて少しお話ししてみます。

前提条件として
「個人差が大きい」ということはご理解ください。

1番の専門は当たり前ですが「摂食指導」です。

哺乳から始まり、離乳食、幼児食へと移っていくわけですが、そのタイミングがダウン症のお子さんの場合、かなりデリケートになります。そして、これはダウン症に限らないのですが、大体のお母さんが離乳食においてやってしまうことがあります。

ステップアップが早すぎる

このステップアップのタイミングについて、お母さんに「もう少し我慢!」ということが、私の仕事の重要ポイントです。お母さんを「我慢させること」でしょうか(・_・;

口を丁寧に育てるためにはたくさんの過程があります。例えば、指先の発達だったり、姿勢、知的面の発達などもこれに関わります。離乳食を1つとっても、口だけを見るのではなく、それ以外の寝返りやハイハイ 、歩行などの運動発達、またその運動の際の動きの特徴についても細かく分析する必要性があります。

つまり、身体の使い方をバランスよく発達させることで、口も発達していくため、口の練習のために、身体の使い方の指導をしたりします。

また調理面も重要です。お母さんがいかに楽にして、お子さんのお口の発達にあった食事を料理できるかが重要です。ここをきちんと指導しなければ、「面倒くさいな、もう少し固くてもいいかな?」など、難易度の高い食べ物にシフトしてしまうことが多いのです。ですから、楽に調理する方法を指導します。

さらに、重要なのが「栄養」です。口の発達を緩やかに着実に行うためには、栄養を適切に確保することも重要です。栄養計算をし、その量を毎日維持する方法を模索します。

この「食事能力」「調理」「栄養」「全身発達」のバランスって実はとても難しくて、あっちを立てればこっちが立たない。となりがちです。

ダウン症児の食事支援のポイント

上述の通り、全体のバランスが非常に重要なのですが、何れにしても「焦らないこと」が重要です。

とはいえ、のんびり構えれば良いのではなく、「ステップアップの瞬間を見逃さない」という視点も大事です。

私がダウン症のお子さんに対して、口だけではなく、鉛筆や食具の持ち方、姿勢、運動、呼吸、排泄状況など多方面について確認をしていると「長岡さんはSTじゃないんですか?」と聞かれます。けれど、私としては、口を育てるために必要な部分だから評価して指導しているだけですから、結局は「お口の発達訓練をしているんですよ」とお答えしています。

そして専門職としてやっていることは

「〇〇になったらステップアップ」

という指標を家族に伝えるというもの。これを明確にお伝えすることで、ご家族が、じっくりお子さんを観察し、ステップアップを我慢し、「あ、いまだ!」というタイミングで適切にステップアップを導入できる。それにより、本人の能力が最大限引き出せる、というわけです。

じっくり観察し、適切なタイミングで適切なアプローチをする。簡単そうですが、難しい。またこれもお子さんによって個人差が大きいところ。だからこそ、専門的な方の意見を聞いて欲しい。そして、楽しくじっくりと育んで欲しいな、って思います。

口周りの筋肉のバランス・呼吸の能力・体幹などをじっくり着実に育てましょう。それが声・言葉に繋がるのです。

お子さんの可愛らしい声での会話。楽しみですね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。