先日、施設への昼食評価へ伺いました。食事形態がやや不適切で、もうすこし軟らかいごご飯へ変更してはどうですか?と伺ったところ「お菓子とかボリボリ噛むから、固い方がいいかなと思うんですけど」とのご返答がありました。今日は「おやつは噛むんです」について。
おやつは噛めるんです
子ども用のおやつもいろいろな種類がありますが、結構噛むお子さん多いですよね?おせんべい、クッキー、チップスなどなど。そう・・・噛むんです。じゃあ、やっぱり食事も固いもので噛む方がいいんじゃないの?そう思いますよね。
噛むことの目的
噛むことの目的は、このブログでも何度もお伝えしていますが、「食べ物を丸飲みできる形にすること」です(詳しくはこちら⇒☆)。ですから、固くても軟らかくても丸飲みできる形にすることが目的となります。
そして丸飲みするためにはいくつか条件があります。
- 大きさ
- 量
- なめらかさ
つまり、大きすぎるものは噛むことで小さくする。1口量が多ければ噛むことで口の中で分ける。なめらかさが足りないものは噛むことで唾液とすり混ぜて、なめらかにする。
この中で一番難しいのが最後の「唾液とすり混ぜる」です。
噛み方の違い
ではおせんべいを噛むときって、どうして噛むのでしょうか?それは、丸飲みできないからです。ではおせんべいをもぐもぐゴックンするまでの流れを想像してみましょう。
- 口におせんべいを入れる
- 前歯で割る
- 奥歯に移動させて砕く
- 砕かれたせんべいを唾液とすり混ぜる
- なめらかになったせんべいをゴックンする
ここで、3と4の噛み方に大きな違いがあることに、お気づきでしょうか?
3の噛み方は、いわゆる「噛み砕く」ことが目的です。その為、あごの動きは上下運動がメインとなります。
しかしそれが4になると「すり混ぜる」という動きが必要になります。例えば料理で、すり鉢+すりこぎを使うときを想像してください。ぐりぐりと回しながらすり混ぜますよね。あごも同様で、上下左右複雑にねじれる動きをすることで、すり混ぜるができるのです。
そう考えると4の動きはやや難易度が高くなることが想像して頂けると思います。
あごの動きの発達
赤ちゃんがうまれて、母乳・ミルクを飲み、徐々に離乳食を食べて成長し、大人と同じような食べ物が食べられるようになる。その過程で、あごの動きは変化をしていきます。
生まれたばかりのころは、あごの上下運動だけで哺乳をしますが、徐々に舌や頬、口唇の筋力発達に合わせて左右運動が出現。そして牛が草を噛むような下あごを回す動きが出現するようになります。これを回旋運動と言います。
顎が回旋運動しながら、食べ物をうまく咀嚼するためには、舌や頬・口唇の協調した動きが必要で、本来はそれらの動きと同時に発達することで、最終的に咀しゃくが完成します。
ですから、いわゆる噛めるようになるというのは、あごの回旋運動もさることながら、他の器官の運動発達も大きく影響しているんですね。
お菓子を噛むときって?
おせんべいの話に戻しましょう。おせんべいを食べるとき、まずは歯で砕く動作が必要になります。この砕く動作は一見すると、「噛めているように見える」ものです。しかしそれが違う、ということは上述のとおり。咀しゃくには次の段階「すりまぜる」という動きが必要なんですね。
ですから、かみ砕く⇒すり混ぜる、この両方ができているのかが重要な判断ポイントになります。
ご飯を噛む
ご飯は、そのものの水分量もやや多いため、丸飲みしようと思えばできます。ですから、ご飯を食べる際の下あごの動きを見てみましょう。あごは上下に動いていますか?大きく回旋する動きは出ていますか?もし上下運動だけでゴックンをしているようなら、まだ咀しゃくができているとは言えません。ですから、そのご飯はまだ合っている形態ではありません。少し軟らかく炊いてみましょう。
おやつはどう食べる?
ではおやつは噛むのはどうしたらいい?という疑問がわきますね。ボリボリと噛むようなお菓子は、まずは「かみ砕く」練習になります。更に、かみ砕くことで、わずかに「すり混ぜる」を練習することにもなっているので、窒息等に注意すれば、こういうお菓子は不正解ではありません。練習を兼ねて試すことも必要です。ただし、かみ砕くからすり混ぜるにつなげていくという意識は持ち続けてください。
そう考えると、おやつ選びも難しいのですが、お子さんの口の動きの変化ポイントを知ると、すこーしおやつ時間に、お子さんの口の動きが気になるようになります。
そしてお子さんの顔を見てあげてください。美味しそうに頬張る顔は可愛らしいものです。一生懸命食べている姿はあっという間に成長してしまいます。おやつの時間を共有し、顔を見ながら「美味しいね」と言える時間を、大切にしてくださいね。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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