【びぃどろ講座】補聴器ってなに?

私は言語聴覚士の資格を持っています。言語聴覚士。げんご聴覚し。そう、「聴覚」関係あるんですよね。でも、あまり聴覚の話ってしないですよね?今日は聴覚にまつわるお話です。

補聴器ってなんですか?

お歳を重ねると、耳の聞こえが悪くなります。先日のブログ記事にもそれについて書きました()。耳の聞こえが悪くなると登場するのが「補聴器」。

誰でも知っているこの名前。なのに一体これがなんなのか、あまり知られていません。補聴器ってなんでしょうか?なんとなく「音を大きくするもの」というイメージではないでしょうか。それも間違いではないのですが、ちょっと説明不足ですね。

よく通販雑誌とかにも「集音器」とか売っていますが、あれとの違いも意外と知られていませんね。今回、少しそれをまとめてみましょう。

集音器と補聴器

集音器と補聴器は全くの別物です。というか、補聴器と名乗れるのは厚生労働省からの認定を受けた機器だけです。つまり、集音器は「補聴器には満たないもの」ですから、購入には慎重になりましょう。

補聴器は、必ず各使用者の聞こえの聴力の型をとります。そしてそれに合わせたフィッティングが必要となります。ですから対面での購入しかできません。量販店や通信販売で購入できる時点で、補聴器ではありませんのでご注意ください。さらにこのフィッティング後、経過フォローをして再調整を繰り返さないと本当にマッチングさせることはできません。その点も考えると、補聴器って結構大変ですね。

補聴器の仕組み

そもそも補聴器ってどんな仕組みなんでしょう?流石にメカニックのことは細かく説明できませんが、簡単に仕組みをご説明します。
簡単に言うとマイクで音を広い、それをアンプで増幅して聴こえやすいように加工して、それをレシーバーから耳に届けるものです。え?簡単すぎますかね?もう少し説明しましょうね。

【マイク】
まずは外の音をマイクで拾います。拾われた音はここで電気信号に変換されます。補聴器には色々な形がありますが、とりあえず外から見える位置にあるものにマイクが組み込まれています。あの小さいボディの中にすごい小さく高感度のマイクが入っているんですね。

【アンプ】
補聴器の最大の特徴はここ。アンプです。電気信号として伝えられた音は、ここでまずは増幅されます。大きくなるんですね。そしてそれだけに止まらず、入ってきた音の強弱、高低、方向といったさまざまな情報も全てキャッチし、使用者の聴こえの型に合わせてマッチングさせて調整します。そのためのコンピューターが組み込まれているんですね。さらにさらに、不要な雑音を抑えて、声だけを強調したりして快適に聞こえるように変換してくれるのです。すごい!

【レシーバー】
ここではアンプで調整された電気信号を、再度音に戻して耳へと送り返す役割を担っています。これは耳の中にはめている部分ですね。

こうして見ると、あの小さいボディにすごい高性能なコンピューターが組み込まれていることがわかりますね。
高額になるはずだ・・・^^;

補聴器の補助は?

補聴器は高額なので、できれば補助が欲しい、そう思いますよね?しかし基本的にはなかなか補助は出ません。

補聴器購入時の補助の対象者は「身体障害者手帳」を交付された方のみです。また、手帳を交付された方の中でも、聴覚障害の等級によって補助の有無が変わりますが、基本的には高度〜重度難聴の方のみの対象となります。

ですから「ちょっと聞こえが悪いかな?」と言う方は対象になりません。補聴器がないと、日常生活に著しく問題が生じるようなかたのみです。

買う?買わない?

補聴器は高額ですから、購入にはやや悩んでしまいますね。要不要は私が言うことではありませんが、どうせ購入するなら、眼鏡屋さんとかではなく専門店での購入をお勧めします。補聴器をフィッティングする際には防音室が必要です。その防音室の防音性能も、補聴器のフィッティングの正確さには重要です。そして、フィッテングする方の技術はもちろんです。

最近ではお試しができる店舗やメーカーも多いので、それらを試すのもいいと思います。

お歳を重ね、耳が遠くなると、コミュニケーションがとりにくくなります。家族の会話についていけない、聞き返して怒られる、テレビが大きいと言われる。意外と孤独感を感じる高齢者が多いのも事実です。

補聴器購入をするしないは別としても、高齢者の孤独感が意外とこんなところからきている場合も多くあります。ご家族が、おじいちゃん・おばあちゃんの聴こえに関心を持つことで、少し元気になれる方もいらっしゃるかもしれません。

私の祖母も80歳をすぎてから耳が遠くなり、私の勧めで補聴器を購入しました。30万円したと思います。けれどつけ出してから、本当に会話も円滑になりましたし、コミュニケーションが楽になりました。

祖母が他界した時、棺の中に補聴器を入れたのを覚えています。
きっと天国で、お話聞いてくれているのかな?なんて思います。

今日は誰でも聞いたことのある「補聴器」について。少し身近に感じていただけましたでしょうか?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。