【びぃどろ講座】医療的ケア児のママの日々

先日、偶然担当の医療的ケア児ママのAさんと遭遇。訪問予約取らないと〜という状況ながらもしばらく会えていなかったのですが、今日はこのママさんとの出来事について

会いたかった!!

顔見てそうそうにAさんから、「長岡さん!〜会いたかった!!」と言われて、「私もですよ〜、調子どうですか〜?」なんて話をしたのですが、なんだかちょっとお疲れなご様子?どうしたのかな?

ちょうど私も夕方に用事があったため、それまでお茶でもすることにしました。

このママは医療的ケア児のお子さんを抱えていることもあり、日々本当に忙しく、なかなかメールの返信もままならないということがありました。ですから、連絡をするときは時間にゆとりをもつなどの配慮をしていました。

「長岡さん、最近私スマホを買い替えたんですが、使い方が分からなくて、いよいよ連絡がみんなと取れず困ってるんです」

と。え?スマホ操作?

そんなわけで、設定がおかしいから直して欲しいと言われたので、ちょっとスマホを拝借したのです。

メール読めない問題

とりあえず、スマホがなぜか「おやすみモード」になっていたので、通知から何から一切無音設定。それは困っていたはずだと思い、使い方を説明し、直してあげました。ついでにいくつか一緒に設定を見直していたのですが、そのときに見えた画面に驚愕。

なんと・・・

メール未読数980件!!!

えぇぇ!!??

そりゃ見ない。もう見ない。絶対見ない。
「980件だよ!?Aさん、これどーする!??」と聞いたら「もう、よくわかんないとこからもくるので放ってるんです。最近はみんな、こんな感じなんで、何か用事があるときは電話です(笑)」とのこと。そりゃそうなるよねぇ。

医療的ケア児ママのあるある

この話を後日、私の友人の、同じく医療的ケア児ママに言ったら「わかる〜、そうなるよね〜」と言っていました。おぉ、共通認識なのか。

確かにこの友人が出産した直後、いつもはLINEもポンポン返ってくるのに、突然既読になるのが2日後になった、ということを経験していたので、納得しましたが、こんなのって普通ではないよな、とも思ったんです。

例えば食事ひとつ取ってみても、経管栄養だった場合は注入前に補水や薬の注入があります。注入自体にも時間がかかりますし、それが終わったら洗浄などを行わないといけません。嘔吐の可能性があるお子さんの場合、注入後の様子見も必要です。さらに食べたら出るので、オムツの交換などもあります。排便困難がある場合、摘便などのケアが必要となります。

もう一日フル稼働しているので、メールとか気にしていられない。そうなってしまうんですね。

ママだって生活者だ

そして一番忘れてしまわれがちなのが、「ママだってご飯食べる」という視点です。

ケアが必要なお子さんに対して食事を食べさせている間は、ほとんど食べられないんですね。食事の形態も違うなら、2種類作らないといけません。それをお子さんのケアが終わった合間にする必要があります。とは言っても、動き回るお子さんなら怪我が内容に気を遣わないといけませんし、てんかん持ちでしたら発作にも注意が入ります。落ち着いて食事をすることもできません。

さらに食事を用意するということは、買い物にいくことも必要です。また片付けるときにゴミを捨てるという行動も必要です。

このように、「食べる」という1つの活動をとっても、無数の活動をこなさなければ成立しないのですね。

それを医療的ケア児ママは、一人で行うわけです。それは潰れてしまいますね。

以前別のお母さんがおっしゃっていた言葉。医療的ケア児の在宅介護は「24時間1人NICU」だと。

本来なら、NICUで医師や看護師など複数のスタッフが行っているケアを、たった一人のお母さんが担うのです。

こういう現状を知って欲しい。そして、こういう現状を変えることはできなくても、お母さんたちの逃げ道を作る支援が、もっと広がって欲しいと考えています。

まずは、こうして伝えることから。

2020年のびぃどろは、少しずつステップアップしていくのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。