【びぃどろ講座】療育なんて受けてない!?

先日親しい相談員から、ちょっと相談がありました。彼女が担当になったお子さんの中で、ちょうどいろいろな事情が重なって、「療育」を受けないまま成長した、Aちゃんというお子さんがいるというんですね。

どうしてそんなことが起きたんでしょうか?今日はそのお話。

その子はどんな子?

今回の主人公であるAちゃんは、私の担当ではないことや、個人情報の保護の観点から、概要だけの説明になりますが、幼児期のお子さんで、生まれ持っての病気をお持ちとのこと。そして、生まれてすぐから医療的なケアが必要な状態でしたので、産院を退院したあとは訪問看護師さんが、定期的に訪問していたということでした。

しかし生まれてから何年にもなり、小学校入学を見据えて動かなければならない時期が目前になっているにもかかわらず、療育を受けたことがない。そんな状態だったんです。

そう、つまり、生まれてから何年もたっているのに、サービスは訪問看護だけなんです。

療育施設ってどうやって知るの?

さて、療育に携わったことがない方々からしたら、療育って、そもそもどうやって受けるもの?というふうに感じるのではないでしょうか?

例えば子供が成長する過程で、3歳になったら幼稚園の準備をして〜6歳になったら小学校から案内が届いて地域の小学校へ入学。きっと療育もまぁそんな風にいくものかもね、といった印象ではないでしょうか?

実際、私の活動エリアでは生まれる時に、自治体から市内の情報雑誌をいただきます。そこには市内の図書館、公園、公民館、児童館、幼稚園、保育園など、育児に必要な自治体情報が盛り沢山に書いてある冊子です。

私が子どもを出産したときは、やはりそれを一生懸命読み込んで「来週はこの公園に行ってみようかな?」なんて考えて過ごしていました。

そして、その冊子にはもちろん「療育に関わる施設」というものも全て記載されているんです。

ということは、療育の情報がきちんと提供されているんだから、Aちゃんだって親御さんが連れて行かなかっただけじゃないの?と思いませんか?

必要なら自分で探そう

Aちゃんについては、ご両親も市内で療育を受けられるということ自体を、ほぼご存知なかったようです。案外そういうご両親って、多いんですね。

そりゃそうですよね、こういう仕事していなかったら私だって、市内にどんな施設がどれだけあるかなんて全く知らないと思います。

この話を、医療の現場で働くセラピストとディスカッションした時にも、同じような意見が出ました。

「自治体も冊子配ってるし、市内に療育施設があることの広報はしているから仕方ないんじゃない?」

そういう意見があったのですね。そう、なんとなくわかると思うんですが、例えばいろんな税金とか医療費とか助成金って、こちらから問い合わせないともらえないものじゃないですか?それと同じで療育も、必要としている人が自分で探して、自分で見つけなきゃできないものじゃないの?という考えですね。

果たしてそうなんでしょうか?

権利と義務

医療や介護に対して、福祉・療育って大きな違いがあると思うんですね。これは「権利」と「義務」だと思っています。医療や介護は必要な人が受ける「権利」を持っているんです。

けど、福祉や療育ってちょっと本質的に違うんと思うんです。特に「教育」は大きく違う。

教育って「義務」なんですよね。子供はみな平等に教育を受ける権利がある。そして社会は、子供が平等に教育を受けられるよう、資源を整えて提供する「義務」があるんです。そこが医療との大きな違いです。医療や介護は、提供する側の人間からの発信でするものではありません。しかし教育は、能動的に社会が提供しなければならないんですね。

そこが医療と教育の壁なんだと感じています。

Aちゃんの場合

Aちゃんの場合、訪問看護が長年介入していました。医療的ケアがありながらも安定して自宅生活ができていたこともあり、その時点である意味完結していたんですね。

それは関わるスタッフが「医療者」だったからなのかな?なんて思うんです。

そこに福祉の眼があったらどうなっていたでしょう?

例え医療的なケアがあったって、Aちゃんが教育を受けるための環境を整えることが求められます。遊びや社会交流も教育の一つです。家庭で通園することなく療育を受けることもなく、医療的ケアの関係で自宅から出ることもなく日々過ごすAちゃん。そこに教育・療育の観点はあったんだろうか?と少し疑問に思う部分があるのが本音です。

これはAちゃんのご両親が適切に療育していない!という意味では全くなく、Aちゃんのご両親に「療育」というものの存在を届けられていないことが問題だと思っているんです。

生まれてすぐ病気がわかったAちゃん。そこにいたお医者さん、助産師さん、看護師さん、病院のソーシャルワーカーさん、赤ちゃん訪問の保健師さん、訪問看護師さん。誰か一人でも教育や療育について疑問に思う人はいなかったのだろうか?そんなことを思うのです。

医療・福祉・行政がまた適切な繋がりを作らなければいけない、そんなことを強く感じた出来事となりました。

せっかく私も行政の方とつながりもできているので、こういったお子さんの療育への橋渡し。何か良い仕組みづくりに動きたいなと思います。

医療的ケアのあるお子さんの支援。それは私にとって大切な課題なのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。