私は小児訓練も積極的にやっている部分もあり、兄弟児を含めて、よく「しつけ」についって質問されます。今日はそのお話。
しつけって何?
単語を調べるなら、いつも通りWikipedia先生に聞いてみましょう(笑)
しつけ(躾・仕付けまたは仕付)とは、人間社会・集団の規範、規律や礼儀作法など慣習に合った立ち振る舞い(規範の内面化)ができるように、訓練すること。概念的には伝統的な子供への誉め方や罰し方も含む。(Wikipediaより)
なるほど…、まぁわかるようなわからないようなですが^_^;
結局は、集団活動でルールに則って、迷惑をかけずに生活するためのものでしょうか。確かに、「〇〇したらおかしいよ」「そんな言葉遣いダメだよ」などと言うことも多いですね。
さぁ、発達に難しさを抱えるお子さんの場合って、どうやってしつけをするのかな?
ある訪問で
ある日、戸別訪問に行きました。Aくんと言って、小学校低学年の元気いっぱいの男の子。おしゃべりも上手になり、部屋中を走り回りながら、私の訪問中も机上で書字や描画の活動をしたり、おやつを食べてもらって口腔機能の確認をしたり、戦隊モノの真似をして全身の運動機能を確認したり…と、色々とハイパワーに遊んでおりました。あ、いやいや遊びじゃなくて、仕事です(笑)
するとAくんから突然「帰って」や「あっち行って」などの発言がありました。もちろん本気で言っているわけではなく、すこーし嫌だなと思うことがあった時の、Aくんなりの自己防衛です。それからも少し“乱暴な言葉”が出ました。
そこで当然お母さんが「その言葉遣いやめなさい。よくない言葉だよ」と言いました。“しつけ”としての言葉ですね。しばらくしてAくんは落ち着いて、活動もしっかりとこなすことができました。するとお母さんから「ああいう言葉をい言うようになっちゃって。お友達とか、先生とかの影響もあるんでしょうけど困りますね」とおっしゃいました。
さぁ、どうでしょうか?
障害児だからと言わないで
Aくんは発達に難しさを抱えるお子さんです。ですから療育も長年受けています。そう言う子が、ちょっと乱暴な言葉を使ったり、ちょっとトラブルを起こしてしまうと、どうしても疾患のせいにされてしまう可能性があるんですね。
でも、小学校低学年の男の子。みんな言葉遣いって、良いかしら?
そう、実は誰でも通る道なんですね。けれど、そこに診断名がついてしまうと、なんとなく「疾患のせい?」と言う雰囲気になってしまう。そして、そう言うお子さんに対して周りは「しつけ出来てるのかしら?」と言う視線を送ることさえあります。そのため、お母さんとしては「ちゃんとしつけをしている」と言うことを、周りにわかってもらおうとする気持ちが生まれます。
だから人前で叱ったり、人前で“しつけ”をしないといけないと思ってしまうのです。
そうなると「しつけ」は、本人のため、と言うより、お母さんの立場を守るためにすることになってしまう場合があります。ただお子さんが障害を抱えていて、育児も療育も大変なのに、お母さんの周囲への気遣いがどんどん増えてしまうんですね。
診断名がない定型発達のお子さんなら、「小学生になるとこんなもんだよね〜」と、周りは寛容なのに、障害児というだけで、「障害児だからな〜」と言う、ちょっと悪い意味で特別視されてしまうこともあると思います。
しつけの本質
私の考えるしつけの本質は、「将来本人が社会的に困らないために」行うもの、としています。ですから、「今」できる必要はなく、「将来」できるようにするものです。さらに言うと、「大人までにできれば良い」と思っています。
Aくんのちょっと乱暴な言葉に対しても同じようにお母さんへ説明しました。
「同い年の子達、みんな同じような言葉を使うんですから、Aくんだけ障害のせいで言葉が悪いんじゃないですよ。しつけも、よくない言葉であるということを「教える」、ただそれだけで「やめさせる」までは熱心にしないで大丈夫。よくない言葉なんだってことを伝えることが目的なんですよ」とお伝えしました。
翌日、お母さんからメールが届きました。
「前まではいつかできればいいか〜、と気長に待てていたことも、今はすぐに成果を求めてる自分がいたのでハッとさせられました!」
そうやって、お母さんがお子さんのしつけを自然と負担なく行えるようになるって、実はとても大切なことなんじゃないのかなと思います。
しつけは難しいです。正解はないのだと思います。ただ、特別視はしなくて良いのかな、そんな風に考えさせられた時間でした。
とはいえ、私は?え?自分の子供達には叱り飛ばしてしまいますけどね(笑)ま、それも育児の醍醐味かもしれませんね。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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