【質問】のどぼとけと声の関係

先日、他職種の方との会話中、『声の高さ』についての話題となりました。男女の声の高さの違い、ハスキーボイスはなぜなるの?など、今日はその質問にお答えします。

のどぼとけがキーワード

男性は喉仏がありますね。しかし、じつは女性にもあるんですよ。女性はほとんど見えないため、無いように思われますが、女性にもあります。しかし大きさが違うので、外からはあまり見えないことから、無いと誤解されるんですね。

じつはこの喉仏の大きさが、男女の声の高さに大きく影響しているんです。

のどぼとけっていつ大きくなる?

男性(男児)は小学生高学年ごろから思春期を迎え、二次性徴がはじまります。そして、その二次性徴の特徴の一つとして、だいたい12〜13歳ごろから声変わりがはじまります。声の高さはおおむね、1オクターブ下がります。幼いころは主に頭の周辺筋肉を使って発声しているのですが、このころから筋肉や骨格も成長するため、発声の際に胸の周辺筋肉を使うように変化します。

このころにの喉にある軟骨が成長し、一部が大きく前に隆起します。これが喉仏です。

そして喉仏が成長することで、発声方法が変化し始めます。すると、幼い頃のままの発声方法では声が裏返ったり、うまく話せなくなったりするので、徐々に大人の発声方法に変化するのですが、個人差があるため、中には大人になっても発声方法が変わらず声があまり低くならない場合もあります。

私たち言語聴覚士の元へは、まれに声変わりの時期に「声の出しにくさ」について相談に来られるお子さんがいらっしゃいます。そのときの対応も、言語聴覚士は知っている(はず⁉)ので、お困りの際には相談されるのもいいでしょう。

ちなみに、このころは喉(声帯)の使い方を学ぶ時期でもあるので、大きな声を頻繁に出すことによって喉に負荷をかけると、将来声がかすれ、ハスキーボイスとなることもあるので注意しましょう。

のどぼとけと声帯の関係

さて、こうして二次性徴期に喉仏をつくる軟骨が変化し、声に変化が出ることが分かりました。でも、なんで喉仏が大きくなると声が低くなるんでしょうか?

この喉仏は、じつは声を作るための『声帯』とつながっているんですね。

上図を見てわかるとおり、声を作る2枚の声帯は、喉仏からスタートして喉の後ろに繋がります。そして発声の際にその2枚が震えることで声がでます。そして、男性は喉仏が隆起する分、女性より声帯が長くなるのです。

声帯の長さ

男性は声帯が長くなり、女性は短いのです。これは弦の長さで音の高低が変わる、バイオリンとコントラバスの関係にあたります。弦が長いと低音、短いと高音になりますね。

このように二次性徴期になり、喉仏が隆起し始めると男性は声が低くなるのです。

ハスキーボイスは?

さて、YouTubeの「びいどろチャンネル()」をご覧になった方はご存知と思いますが、私はハスキーボイスです。非常にコンプレックスなので、嫌なのですが、変えることはできないので仕方ないとは思っております・・・。それにしても、なぜハスキーボイスになるのでしょうか?

大学時代に耳鼻科で内視鏡をとっていただいたことがるんですが、その際にわたしの声帯を初めて見て判明したこと。

「声帯が生まれながらに歪んでるよ」

ぇえええっ⁉

まぁ、この歪みが先天的なのか、成長期の声の乱用によるものかは知りませんが、いずれにしても声帯の形が歪んでいるんですね。すると発声時の声帯の震え方に、左右差が生まれます。すると2枚の声帯に隙間がうまれ、そこから息が漏れてしまい、声がかすれるんだとか。

へぇー。

そんなわけで、自分のハスキーボイスは先天的なので仕方ないとあきらめているのですが、わたしのタイプのハスキーボイスは難点があります。

喉を痛めやすいんですね。ですから声の出し方にも配慮が要りますし、声を出しすぎたときには休めるための工夫が要ります。そうすることで喉をいたわりながら過ごしているといったところです。

この喉を労わることを「声の衛生」と言います。この「声の衛生の指導」もまた、STの仕事のひとつです。みなさん、声、大事にしましょうね。どんな声でも、自分だけのものですから。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。