先日利用者さんAさんのお宅への訪問の際に、「最近味噌汁でむせるようになった」とのこと。そのときに便利な商品を紹介し、それがとても良かったのでご紹介です。
こんな商品見つけたよ
今回、こんな商品を利用者さんへ紹介しました。
いま、嚥下障害の方むけに、とろみ剤と呼ばれる専用商品がたくさんあるなかで、あえてこの商品を紹介した理由はなんでしょうか?
怪しい粉を売りつける!?
以前の話になりますが、とある嚥下障害の方のお家へ初めて訪問したときのことです。嚥下評価を行い、食事の形態の調整と指導をしていました。そこで、お茶がサラサラでむせていたので危ないな、と思い「とろみ剤」を紹介しました。
この「とろみ剤」、私にとってはとても馴染み深いものだったので、あたりまえの様に紹介をしたのですが、この直後に大変なことになったのです。
「今日来た人、怪しい粉を売りつけてきた。変な宗教にはまってるんじゃないかしら!?」
なんと!?
未知の商品
私にとってあたりまえのこのとろみ剤。たしかにこれまで介護の経験などがない人からしたら未知の商品になります。さらに、口に入るもの。とてもデリケートなんだなぁと感じたのです。
とはいえ、食べることの訓練に伺っているわけですから、食べるものを紹介しないといけないので、どうにかしたい。
これはなんでだめなんだろう・・・。そこでふと考えたのです。
「水溶き片栗粉と同じようなとろみが、加熱しなくてもつけられるんですよ」ってフレーズ。私がとろみ剤の説明をするときって、だいたいこういう説明をするのですが、そう、水溶き片栗粉です。水溶き片栗粉なら受け入れられるなら、これとの違いを考えてみよう、と思ったのです。
水溶き片栗粉。そうか、ふつうにどこの台所にもあるものだ。とろみ剤はふつうのお家にはない。そう考えると、馴染みのあるものを使うところから考えてみよう。
ふつうの商品で似たものを
そんなわけで上述の「とろみ上手」という商品。これは一般的なスーパーでも置かれていて、片栗粉と同じ様に売られています。これって、介護専門商品を買うより、ずっとハードルが下がりますよね?だからいいのか!と気がついたのです。
そんなわけで、この商品をお見せすることからスタート。ちょうどTVのコマーシャルでもよく流れていたこともあり、みんななんとなく受け入れしやすい。
このAさんのお宅もそうで、スムーズに受け入れてくれました。そして、使用してしばらくするとこんなご意見が。
「ほんのちょっととろみつけるだけで、こんなに違うのねえ」とのこと。
あぁよかった、とろみの必要性が伝わった!とおもった瞬間でもあります。
その後
だんだんととろみの必要性が伝わるようになり、使うことに慣れてきたAさんご家族は、徐々にとろみ剤というものへのハードルが下がり始めました。そしてその後「お茶にもとろみがほしいねぇ」ということばもきかれるようになったので、ここにきて初めて「とろみ剤」の紹介をしました。
近所のドラッグストアに電話をし、売っている商品を確認。それをご家族にお伝えし、購入していただくことができました。
たかがとろみ剤。されどとろみ剤。紹介し受け入れてもらうには時間がかかることもあります。でもなぜ必要なのか、それを受け入れてもらうためにステップが必要な場合がある。そんなことを学ばせていただきました。
だれもが安心してお食事をとれるようになる。とても大切なことですね。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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