先日わたしの中で心境の変化がひとつ。今日はそのお話。
今のわたしを作ったもの
わたしが言語聴覚士として最初に就職したのは病院でした。その病院には言語聴覚士が居なかったため、いわゆる開設としての就職。開設自体は大変さもあったけれど、それなりに楽しくできました。そこでできた友人とは今でもしっかりと繋がっています。
けれど、どうしても訪問の世界に足を踏み入れたくなったわたしは、訪問看護ステーションへ転職。以後12年間勤務をしました。
訪問の仕事自体は楽しく出来ていたものの、育児休暇などが続くとどうしても、生活に忙殺されて、ただ淡々と過ごせればいいや、という気持ちになることもしばしばありました。訪問を初めた当初から「あんなこといいな、できたらいいな」とドラえもんのようなことばかり考えていたのですが、そこには目をつぶりながら日々の業務をこなしていました。
そんなあるとき、ふと目にしたイベント。
訪問リハ系のイベントでしたが、なんとなく面白そうだったので、参加することにしました。
このイベントが、今のわたしを作ったのです。
起業家セラピストとの出会い
いままで本当に狭い職場の中だけで過ごしてきたわたし。地方暮らしのわたしには、学会も足が遠のきますし、子どもが生まれてからは全く参加せず。他県のセラピストと関わるなんてこと、まったくありませんでした。
そんな中なんとなく参加したイベント。全国各地のセラピストの方と会い、いろいろなお話しを聞くことができました。そして、「セラピストで起業している人たち」にも会ったのです。
わたしにとって起業しているセラピストの方々との出会いというものはその時が初めて。「起業ってなに?」というレベルの知識で、雇われしか経験のない私からしたら、すべてが新しい事だらけ。
こんな世界があるのか・・・
起業家は身近にいた
今思えば、私の両親も起業家でした。父も母も別々の仕事をしていて、それぞれ自分の店を持っていたので、それぞれが個人事業主。けれど、経営のこととか経済のこと、いわゆる「お金」の話については、なんとなくタブーにする家だったこともあり、そういった話は全く家庭でしてきませんでした。
だから全く「お金」の知識のないまま成長していましたし、医療・介護の世界ってなんとなくそう言うことを口にする事自体がマイナスなイメージだったこともあり、あまりそこを意識せずにすごしてきた自分があります。
起業への思いが膨らむ
そんなこんなで、起業家セラピストの先輩方に会ったわたしは、強い衝撃を受け仕事の世界に戻ります。わたしの目指しているリハビリテーションってなんだろう?わたしが働きたい職場ってどこだろう?そんなことを繰り返し考える日々。
それ以来、そのイベントが開催されるたびに全国必ず足を運び、そこで会う人達からたくさんの刺激を受けるようになりました。
けれどイベントが終わり職場へ戻ると、毎日同じ生活。
あのイベントが特別なのかと迷うようになります。
けれど、やっぱり自分の気持ちに素直になり、長年温めてきた起業への思いがはち切れた瞬間「びぃどろ」を設立しました。
「びぃどろ」をはじめたとき、それを伝えようと思ったのはやっぱりそのイベントのメンバー。もちろんみんなが応援してくれたので、起業してよかったと心から思ったものです。
「行かない」選択
起業しておよそ1年。新しいことを考えては実行することを繰り返した1年。今年もそのイベントがあることがわかりました。もちろん参加予定としてスケジュールに組み込んだわたし。
しかしちょっとした家庭の事情で、そのイベント参加に迷う理由が生じました。
無理をすれば行けます。行けばかならずわたしは元気になれます。心のガソリンを満タンにして帰れるのもわかっているし、会いたい人たちにたくさん会える。去年起業を決心したときの思いを聴いてくれた人たちに1年の報告ができる。
それでも行かないを選択したわたし。「行けない」と「行かない」はちがいます。結果として「行かない」を選択したんです。
視点の変化
なぜ行かない選択を取ったのか、結局は自分にとってその方が意味があると思えたからです。
フリーランスになってから、子どもとの時間が増え、子どもとの時間の使い方を考えるようになりました。また、先月2泊3日で帰省した際に「会いたい人に会う」ことの意味を考えるようになったからです。
お金も時間も有限です。だからこそ使い方をしっかりと考えたい。イベントで会える人に「会う」ことが目的なら、イベントではなくきちんと「会おう」と言って会いたい。イベント「ついで」ではなく、会うことを目的として会いたいと思ったのです。そして、みんなからそう思ってもらえる存在になりたいと思ったのです。
またもうひとつ。このイベントはわたしにとって「起業するまでのステップ」だったんだと思うのです。起業して、自分のやりたいことが見えるようになって、自分の力で立って歩けるようになったわたしは視点がおおきく変わっているのを感じたのです。
こどもや家族との時間
会いたい人に会うことの意味
視点の変化
そんな要素を並べたときに、イベントへの参加はやめようと自然に思えた。これはわたしにとってとても大きな成長におもえたのです。
このイベントがわたしを成長させてくれた。
このイベントから離れても歩けるくらい成長した。
このイベントで会った人には、これからも会いに行く。
おおげさかもしれないけれど、これが今のわたし。
みんな、ありがとう。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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