失語症と言う疾患をご存知でしょうか?有名な方で言うと読売ジャイアンツの終身名誉監督である長嶋茂雄氏も患っていらっしゃる障害です。今日はこの失語症について。
失語症の正体
失語症と言う名前だけから想像すると「言葉を失う・・・?」と思いますよね。大きな間違いではありませんが、ちょっと違います。
失語症の定義を言うと以下の通り。
イメージが湧きますか?つまり、脳卒中によって、言葉の中でも「話す・聞く・読む・書く(・計算)」と言った能力に損傷を受けた状態を言います。失語症はこの4つ(5つ)を大なり小なり全てに障害を受け、その症状によっていくつかのタイプに分類されます。
今回は大きく分けて2種類の失語症について説明したいと思います。
※あくまで一般向けの内容ですので、専門職の方からすると物足りない内容になることをご了解ください
運動性失語
これは「うまく話せない失語」のことを言います。代表的なものが「ブローカ失語」と言うものです。特に言葉の「話す」側面の障害が大きく、滑らかに言葉が言えない、絞り出してえ言葉を言うなどの症状が出ます。また「書く」側面への障害もあり、言語全般の「アウトプット」に障害があるものを言います。
失語症の方は、知能面にはさほど損傷を受けえていないことも多く、この状態になると、言いたいことが言えず、非常にストレスを感じます。うまく話せない・言いたいことが通じないなどへの苛立ちや不安が強く、精神的にショックを受け抑うつ状態になる方もいらっしゃいます。
感覚性失語
運動性失語に対してこちらは感覚性。これは「滑らかに話せる失語」になります。え?話せるの?と思いますよね。そうこちらは流暢に話せます。ただしその話の内容が通じないのです。どう言うことかと言うと、物の名前や言葉の一部を言い間違える症状が多く、症状が重いときは「造語」のように実在しない語に置き換えて話をするため、聞き手は内容が理解できません。また、この失語は「聞く・読む」などの「インプット」の障害を強く呈するため、流暢に多弁に話すけれども、周りの言葉を理解することができない、と言う状態になります。
こちらも、話したい言葉がスムーズに出ない、また耳から聞こえてくる言葉を正確に理解できないため、非常にコミュニケーションがストレスになります。
失語症の訓練
脳卒中が原因で発症することの多い失語症。入院先で、言語聴覚士による訓練が行われることが最近は一般的になっていると思います。私たち言語聴覚士にとって、この失語症の訓練というものは、それくらい重要な業務の一つです。
症状によって訓練内容は様々ですが、イメージとして絵カードなどを見ていただき、その名称を答えてもらう…そんな訓練が多いです。
これは例えば「りんご」の絵カードを見ていただいた場合、「りんご」という単語を言えるようになることが目的なわけではありません。この言語刺激を通して、脳の言語を司る部位を活性化させて、言語能力が全体的に改善することを目的としています。
ですから「絵カード見せて言わせるくらいなら、簡単かも?」と思われがちですが、この絵カードの種類をどうするか、どうやって見せて、どういう声かけをすることで、最大限に脳が活性化されるか…を考えて、言語訓練をしているわけです。
脳卒中は今や身近な病気。もし家族が・自分が患った場合、どんな症状が見られるのかな?そんな知識が皆さんにお届けできればと思います。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
主には脳出血、脳梗塞などの脳血管障害によって脳の言語機能の中枢(言語野)が損傷されることにより、獲得した言語機能(「聞く」「話す」といった音声に関わる機能、「読む」「書く」といった文字に関わる機能)が障害された状態。