先日、おもちゃのラッパが上手に吹けるようになるには?と言う質問を受けました。今日はそのお話。
ラッパの玩具ってどんなの?
ラッパの玩具にもいろいろな商品がありますね。最近では100円ショップも充実しているので、そこで購入することもできます。
これはダ○ソーで購入してみました。
さて、私たち言語聴覚士が対象とする疾患で、このラッパがなかなかうまく吹けない疾患がいくつかあります。呼吸器系の病気の方はもちろん、そして口唇の力にやや難しさのある病気のお子さんです。例えばダウン症や口唇口蓋裂などですね。
ラッパから音を出す仕組み
そう言えばラッパから音を出すために、私たちの口はどうやって動いているかなんて、考えたことありますか?
ラッパから音を出すためには、ラッパの吹き口に向かって、私たちの吐く息『呼気』がダイレクトに入る必要があります。
しかし、そんな簡単に行かないのラッパです。実はこの『呼気』には逃げ道が2箇所もあるんです。それがこちら。
逃げ道その1
鼻の穴。
そう、口から音を出そうとしても、鼻呼吸をしてしまうと、口ではなく鼻に息が逃げてしまいます。そうなると、口につけたラッパから音は鳴りません。
これはどう言う時に起きるかと言うと、のどちんこが正確に動かない場合です。のどちんこの周りにはいくつも筋肉があり、話す時・食べる時など、必要な時にのどちんこを持ち上げて、息や食べ物が鼻を通らないように蓋をする役目があります。
これは、脳の障害で麻痺が生じた場合や、口蓋裂などで解剖学的に筋肉が正確な位置にない場合、適切に動かせなくなることで生じます。
逃げ道その2
唇の隙間
鼻の方への通り道は塞ぐことができても、問題が唇に起きることもあります。
ラッパの吹き口に唇をしっかりと密着させることができない場合、吹いても唇の隙間から息が漏れてしまって音が鳴りません。
なんで息が逃げちゃうの?
なぜ息が逃げてしまうのかと言うと、ラッパの吹き口には抵抗力があるんですね。
細くなった管に息を通すこと自体、抵抗力がかかります。また、笛に弁がついている場合はそれも抵抗がかかります。そのためこれらの「抵抗力」よりも、強い力で「鼻」と「唇周り」を塞がなくては、呼気が逃げてしまうのです。
鼻と唇を鍛える
そんなわけで、子供がラッパを吹けるようになると言うことは、とても当たり前なようで、実は複雑なことが絡んでいるんですね。
鼻からの逃げ道を塞ぐためののどちんこ。これを「軟口蓋(なんこうがい)」と言いますが、軟口蓋を持ち上げる筋力を培わないといけません。また自由に動かせる能力も必要です。
唇からの逃げ道を塞ぐには、唇を力を入れて窄めるための「口輪筋」を鍛える必要性があります。あと唇に適切に力を入れるためには頬や舌の筋肉も連動しています。そう言った点からも、口の中の様々な器官を複雑に育まなければいけません。
では、どうやって育めばいいのでしょうか?
今回はすこし長くなりましたので、続きはまた次回。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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