【びぃどろ講座】そもそも「ゴックン」って何?

嚥下障害と一言で言っても、原因やメカニズムは様々です。そういうちょっと専門的な話は今回は置いておいて、あくまで「ゴックン」ってどういうものなの?ということを今日は簡単に説明してみようと思います。

摂食・嚥下っていうけれど

さて、医療関係のお仕事の方ならなんとなくわかるかもしれない「摂食・嚥下」。これ一体なんでしょう?

「摂食・嚥下」とは、食物を認識して、取り込んで、胃の中に入るまで全ての過程を言います。そしてそのうち、ゴックンが起きる前を「摂食」、ゴックン以後を「嚥下」と言います。

さて、このゴックンって実はとってもすごいんです。

ゴックンとは?

ゴックンを見るときは、男性なら喉仏を見ればわかりやすいです。食べ物・飲み物を飲む瞬間、「ごくっ」って音がして、喉仏が上下に動きますね。ちなみに女性も喉仏はありますが、小さくて見えにくいんです(過去記事)

この喉仏の動きこそ、ゴックンの実態です。

ゴックンは素早い

このゴックンは、実はとても素早くて、わずか0.5秒ほどの間に起きると言われています。しかしこの0.5秒がうまく機能しないと「誤嚥」を引き起こします。そして場合によっては「誤嚥性肺炎」となるのです。

この0.5秒の喉の動き、みなさんイメージできますか?

嚥下は見えない

嚥下している瞬間って見ることができません。よく利用者さんとも「喉がスケルトンだったらいいのに〜」なんて言っていますが、これも将来ハイテク化によって見えるようになるのか?ドラえもんのポケットにはそんな道具があったりするんでしょうか?

何れにしても喉は見えません。
私たち言語聴覚士は、喉の解剖学を徹底的に勉強します。ですからメカニズムを知っています。
そういえば、大学時代の解剖学の先生がものすごい恐れられていて、解剖学のテスト死ぬほど頑張った記憶が・・・(・_・;

それはさておき、言語聴覚士以外の専門職の方や看護師さんなども、嚥下についてご存知とは思いますが、見えない部分なんでイメージがしにくいと言われます。そうですね。本当にそう。実際言語聴覚士でも、見えないし、瞬間的な動きなんで説明が非常に難しいんです。

そこで今日は、嚥下のメカニズムを一言で説明します!!

嚥下のメカニズム、一言で言うと

嚥下・・・

それは・・・

「ししおどし」です!!!

え?ししおどし?何それ?
これです

ししおどし。「鹿威し」と書くそうです。

なぜ「ししおどし」なのでしょうか?

嚥下はししおどし?

ししおどし。これは上から水がチョロチョロと零れてきます。それが竹の中に貯まります。そして一定量溜まったら「カッコン」となります。ね?

ほら嚥下とそっくり!

食べ物が喉にきます。それが喉(喉頭蓋谷や梨状窩と呼ばれる場所)に貯まります。一定量溜まったら「ゴックン」です。ほら!

この「カッコン(ゴックン)」の時に、錆び付いていたら、動きが悪くなり溢れてしまい誤嚥します。
この「カッコン(ゴックン)」の時に、動きが不十分だったら、竹の中に水(食べ物)が残っていまい、残り物で誤嚥します。
この竹に水(食べ物)が溜まっているのに気がつかなければ、「カッコン(ゴックン)」せずに誤嚥します。
この竹の容量が小さすぎたら、すぐに溢れて誤嚥します。

こんな感じで、結構ししおどしを例えに使うと、イメージしやすいんですね。

伝わらないと意味がない

この「嚥下はししおどし」って、医学的・科学的に見たら怒られそうですが、どんなに正確に科学的なメカニズムを知っていても、患者さん・利用者さんへの説明に使えなければあまり意味がないと考えています。

今、喉がどう言う状態にありますよ
今、むせた理由はここにありますよ
だからこのお食事なんですよ
だからこの姿勢なんですよ
だからとろみが必要なんですよ

それを理解していただくためには、「嚥下」と言うものをしっかりとイメージしていただく必要があります。

私たち専門職は正確さを追求し
患者さん・利用者さんには伝えることを追求しています

嚥下のメカニズム、誰でも簡単にイメージできて、私たち専門職の手が届かなくても、ずっと食事を安心して摂れる。それを目指したいです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。