最近、明治の定番おやつ「カール」のうすしお味が関東で買えなくなったとかなんとか・・・。
そんな話題からPTの知人が「カール湿気らせて食べるのが好きなんだけど、上顎にくっつくよね。なんでくっつくんだろう?長岡さん、解説して」という、相変わらずの無茶振りを受けましたので(笑)、今日はこの「カールの貼り付き現象」について考察します。
カールの原材料は?
そもそもカールって何で作られているんだろう?・・・というわけで、明治のホームページから転載しました。
コーングリッツ、植物油脂、こんぶ風味調味料、食塩、あさり風味調味料、香味油、しいたけエキスパウダー/セルロース、調味料(アミノ酸等)、トレハロース、酸味料、乳化剤、酸化防止剤(V.C、V.E)、甘味料(甘草)、香料、(一部にえび・かに・小麦・卵・乳成分・大豆を含む)
へー、「あさり風味調味料」とか入っているんだ。あさりの味…しないけど(笑)
この原材料名は、多く含まれているものから順に書かれていますので、主原料はコーングリッツであることがわかります。というか、コーングリッツと植物油脂。あとは調味料。
と、いうことは、コーングリッツが上顎に貼り付く原因なのかな?ちょっと他のお菓子も見てみよう。
キャラメルコーンは?
同じような形で味が違うもの。今度はトーハトのキャラメルコーンの原材料を調べてみました。
コーングリッツ(遺伝子組換えでない)、砂糖、植物油脂、アーモンドプードル、アーモンドペースト、食塩、カラメル色素、香料、乳化剤
おぉ、コーングリッツがあった!表面のカラメルが砂糖をふんだんに使っているため、確かに砂糖が二番目に多い。そしてカールと同様に植物油脂が含まれています。
・・・あれ?キャラメルコーンは上顎に貼り付かないよなぁ・・・?
とんがりコーンは?
ついでにどんどん行こう。ハウス食品「とんがりコーン」。同じコーンだし。
とうもろこし、植物油脂、食塩(深層水結晶塩)、砂糖、粉末しょう油、香辛料、調味料(無機塩等)、重曹、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンE)。 原材料の一部に小麦を含む。
お、これは「とうもろこし」。そして植物油脂と調味料。だいたいどれも似たり寄ったりですね。
コーングリッツって何?
コーングリッツってそもそも何でしょうか?おかし作りする人にはわかりやすいかもしれませんね。「イングリッシュマフィン」の表面についている、あの粒の荒い粉。あれが「コーングリッツ」です。
ちなみに・・・乾燥コーンの挽き方によって名称が異なるとか?
【粗びき】コーングリッツ
生地に入れると、ざくざくとした食感が生まれる。
イングリッシュマフィンや、料理のフライの衣に使われることも。
なるほど、お菓子のザクザク感はここから来ているのか!
【中挽き】コーンミール
イタリアのおかゆ(ポレンタ)や、アメリカンマフィンやケーキなど、
料理にもお菓子にもパンにも様々な用途で使われます。
歯切れのよい食感に仕上がるのが特徴
【細挽き】コーンフラワー
グリッツやミールよりも粒子が細かく水を吸いやすいため粘りが出る。
小麦粉と混ぜて薄く伸ばし、トルティーヤ(タコスの皮の部分)やお菓子・料理にも使われる。
コーングリッツ自体が粘るから貼り付くのかなぁ?と思ったのですが、これを見ると、コーングリッツが粘るわけではなく、粘るのはコーンフラワー。じゃぁ違うのかなぁ。うーん、難しい。
原因は材料じゃない!?
コーンをベースに色々みてみましたが、あまり原材料の違いは関係ないのではないか?と思えてきました。
そこで浮上した結論・・・
食べ方じゃない?
私のブログで再々お伝えしているのですが、咀嚼の本来の目的は「食塊を作る=丸飲みできる形にすること」です (関連記事☆)。そのため、これらのお菓子を食べるときも、私たちは唾液と混ぜ合わせて、嚥下できる形状・形態にしているわけです。
もちろん今回例に挙げた、カール、キャラメルコーン、とんがりコーン。どれも、咀嚼して食べると思うのですが、その食べ方をイメージしてみましょう。
食べ方の違いって?
上記に挙げたお菓子のうち、後者の二つはガリガリと噛んだのち、そのまま嚥下につながりませんか?これは、お菓子の大きさ自体が小ぶりで、食塊を作る上で必要な唾液の量も少ないことを意味します。また、小さいということは、少々咀嚼が足りなくても嚥下できてしまう、という特徴があります。
これに対して、この「カール」って結構大きいんです。そのため、結構しっかりと咀嚼しないと飲み込めないんです。そして、咀嚼時間が長くなればなるほど、カール自体の唾液の吸収量が増えます。それにより、粘性が増し、貼り付きやすくなります。
更に1粒が大きいということは、1回で飲み込むために、少し強い圧力が必要になることを意味します。咀嚼されてひとまとまりになったカールは、量が多いので、一旦舌の中央に集められます。そして「えい!」と後方に向かって押し込まれるのですが、この圧力が高くなるのです。
圧力がかかるということは、舌に乗ったカールが上顎に強い力で押し付けられるということです。そう、咀嚼により粘性の増したあのカール。それが、上顎に強い力で押し付けられるのです。
なるほど!
要約すると・・・
この「カール貼り付き現象」の原因として考えられる要因は2つ。
[カールの要因]
1粒が大きい
そのため咀嚼に時間がかかる
自ずと唾液を多く吸う
結果、粘性が増す
[食べる人の要因]
カールが大きいので咀嚼に時間を要す
カールが大きいので嚥下時に圧力をかける
この圧力は舌と上顎が押し付け合うことで生まれる
この2つの要因がちょうど絡み合うので、カールのあの「上顎への貼り付き現象」が起きるのではないか!?
まぁ、これが正しいかはもはやよくわかりませんが(^^;;
お題をいただいた際に、「これ全然STに関係ないやん」と思ったんですが、検証してみると意外にも「咀嚼方法」「嚥下方法」が絡んでいることに気が付いたので、結果オーライ♪
お口の中って、見えないことだらけ。ですが、誰にとっても大変重要な部位ですね。それについて少しこういう視点が加わると、なんだかちょっと面白い。
お楽しみいただけたでしょうか?
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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