私はいくつかの施設と契約し、主に職員さん向けのアドバイザーとして介入しています。利用者さんの中には複数施設を利用している方もいて、その複数箇所に私が入っている、というパターンもあります。今日はそれについてのお話です。
施設訪問の日々
毎日いくつかの施設を転々として、アドバイザーとして介入しているのですが、同じ利用者さんと連日お会いすることもあります。「あ〜、昨日は違う施設で会いましたね〜」なんて声をかけることもあります。
ある日、契約施設へ向かうと初めましてのご利用者さんがいらっしゃいました。Aさんという経管栄養の方です。名前などを確認していると、去年講師としてお世話になった施設にも関わっている方で、1度お見かけしたことがあるような・・・というかたでした。
とはいえ、正式に評価などに入ったわけではないので、ほぼ初めましてでした。
食事評価を行う
昼食時間になりました。その施設は小規模の施設なので、経口摂取の方と経管栄養の方が同じフロアにいらして、全体を見渡すことができます。
食事の様子、食事介助方法、食事形態、水分・栄養バランスなどを確認し、スタッフさんへ必要に応じてアドバイスをしていました。
ふと経管栄養のエリアに目をやると、Aさんが注入中でした。注入物の色が、あまり見覚えのない色だったこともあり、Aさんの注入内容を看護師さんへ確認しました。経管栄養剤ではなく食品でした。少し疑問に思い、1日の栄養量を確認しました。明らかに足りていないのです。推定必要量の6割ほど。え?というか、低栄養そのもの。え?なんでそんなことになってるの?
看護師さんに尋ねると、明らかに足りていないのでご家族に指導しているが、主治医も訪問看護師も気が付いていないようで、注入内容の変更に至らないとか。また、この施設を利用し始めてから日が浅いため、なかなか積極的に指導しにくいという現状もあるようでした。
本人さんの顔は少し丸顔。しかし手足は細いのです。顔だけ見るとなんとなく大丈夫と思うのかな?とも思うのかもしれません。しかしこの丸顔。低タンパクによる浮腫みではないだろうか・・・と不安になりました。
あれ?昨日も会ったね!
翌日、別の契約施設へ行きました。
するとなんと偶然、Aさんがいたのです!!そしてこちらの施設は利用期間も長く、看護師さんとご家族の関係性もすでに出来上がっていました。
そこで看護リーダーにこそっと、昨日の低栄養についての私の考えをお伝えしたのです。
看護リーダーは、現在のAさんの利用フロアと違う場所に配属されているため、注入内容は把握されていませんでした。そこで、現在の注入内容、注入量についてお伝えし、低栄養の疑いがある点を説明。また顔面の浮腫みから、低タンパクの可能性もあるため主治医への相談も必要ではないか、という点をお伝えしました。
後日、看護リーダーがこそっとご家族へ栄養について話をしてくださり、ようやく処方内容の見直しに至った、という報告を受けました。
よかった!
複数施設を見てわかること
Aさんについては、看護師さんへ伝えることができたため、どうにか状況は好転しました。
サービスが多様化し、サービス施設も増えて来ると、1人の利用者さんが複数施設を利用したり、複数サービスを利用することが多くなります。それにより良いこともたくさんありますが、もっとも困るのが「連携が取りにくくなること」。
今回のAさんの栄養面も、主治医はもちろんなのですが、色々な場面で看護師さんが関わっています。施設も複数箇所利用しているため、各々の場所に看護師さんがいて、訪問看護もあり、受診先の看護師さんもいて・・・そうなると、誰が主導になっているのかわからなくなるんですね。
今回、私が2箇所の施設を担当しており、両方でのAさんの様子を見ることができ、状況を共有するお手伝いができたことは本当によかったと思っています。
多職種連携とは言っても、なかなかうまくいかないものです。
私のような、どこにも所属していないフリーの人間がいることで、実は施設と施設、サービスとサービスの連携が取れるようになるのであれば、それはとても素晴らしいことだな、と思ったりしています。
こんな橋渡し役をしてみるのも、セラピストとして、楽しいものですよ。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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