私は市内の複数施設を、定期的に訪問し、施設の職員さん向けの食事指導等を行なっています。その中で、最近よく質問を受ける「外食ではどこがいいですか?」という質問。今日は、外食について。
外食は楽しい
皆さんは毎日、どちらで食事をしていますか?1日3食365日だとすると、1年で1095回も食事をします。お仕事をしている方の中には、昼食はもっぱらランチに行く、という方もいらっしゃるでしょう。それでも1年でおよそ300回。なるべく3食料理して、週末はご褒美で美味しいご飯を食べに行く、という場合も年間50回は行きますね。
しかし嚥下障害などにより、食事形態などに配慮を要する方の場合、外食では嚥下障害に対する対応食はなかなかなく、そのほとんどを自宅で過ごさなければなりません。
外食の良さは、美味しさや、一緒に食べる方との時間の共有という、食べる本人の喜びに注目されますが、もうひとつ大切な視点があります。そう、料理をするお母さんの負担を減らすこと。
主婦にとっての料理
私は主婦であり、母でもあります。その為ほぼ毎日料理をします。朝起きて、主人のお弁当を作り、家族が起きるまでに朝ごはんを作ります。夕方帰宅したまた夕飯の支度をして、家族に食べてもらうわけです。その料理をする時間以外も、買い物に行ったり、食器を洗ったり、献立を考えたり、生ゴミを捨てることも料理の一環です・・・こう考えると、料理って1日の多くの時間を占めている為、主婦にとって中心的な家事となります。幸い私は料理が趣味なので、さほど苦痛ではありませんが、それでも毎日となると疲れる為、ときどきは外食に行きたくなるものです。
主婦の皆さん、料理、大変ですよね?
外食に行きたい
私が食事指導に入っている施設には、誕生日外出というものがあります。誕生月に、美味しいものを食べに出かけるというもの。普段行かないようなレストランなどに行く為、利用者さんも事前打ち合わせの段階から、とてもワクワクしているのが伝わります。
私がアドバイザーとして介入するようになり、お食事外出の前に利用者さんによっては、食事内容について相談を受けられるようになりました。
最近は嚥下食を提供してくれるレストランなども増えていたり、都心部だといろいろな情報がある為、食べられるお店も多くなったと思います。しかし私の暮らす街はちょっと(?)田舎です。そうなると、そもそもお店の数も多くはなく、その中から障害を抱える方でもいけるお店を探すとなると、さらに絞られます。車椅子対応かどうかなども含め、物理的にそこにいけるか、という問題が出てきます。
そしてそのお店に行くことができたとしても、食べられるものがあるのか・・・?という問題もあるのです。
外食をためらう事情
「(車椅子などの原因で)お店に行くのが大変」「食べられるものがない」ということの他に、もうひとつ“外食をためらう事情”があります。
むせたときの、周囲からの視線
施設でもそうですが、嚥下障害の方が食事中むせると周囲の方は非常に不快な表情をします。「汚いなぁ」と思うのです。
確かにそうです。むせたとき、周りに食べ物のカスが飛んだら、不快になる方は多いはず。しばしばむせてしまう方の場合、むせる本人はつらい。その隣でケアする家族もつらい。周囲もつらい。となることもあるのです。これってとても重要な目線と思うんです。
「むせるんだからしょうがないじゃん!」とも思いますが、相手からしたら「汚いと思うんだからしょうがないじゃん!」と思うのも仕方ないですし、その感情は否定できないものです。
私がやっていること
私は、基本的に嚥下障害のある方であっても「普通食の中で食べられる」を意識しています。もちろん重度の嚥下障害の方に、「とんかつと千切りキャベツを食べてください」とは言いませんが(^^;;)、「とんかつは無理でも、エビの天丼なら工夫すれば食べやすいよ」とか「チャーハンもこうしたら外食でも食べられるよ」などのアドバイスをするようにしています。
そしてむせるかたの場合、「個室」を探します。完全個室ではなくてもいいのですが、衝立があるような場所だったり、逆に人が多くて雑音に溢れている場所でもいいですね。“安心してむせられる場所”って案外少ないのです。
施設指導として私が介入したからと言って、お誕生日外出の際に特別行けるお店が増えるわけではありませんが、嚥下障害ならではの視点から、少しでも外食を楽しめればいいなと日々感じています。
食べるための支援をする。そうすることで家族も安心して外食に行ける。お母さんがときどきは家事の手を休めて、外食でホッとできるを目指したいな、と感じています。
主婦の皆さん、毎日の炊事、お疲れ様です!
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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