先日70歳代のご夫婦より、戸別訪問のご依頼をいただきました。奥様が進行性の難病。緩やかに進行するご病気のため、介護サービスや医療サービスの利用についての相談をしたいとのご依頼でした。
進行性の病気の難しさ
脳卒中などにより、急にご病気を発症され入院する場合と、今回のご相談者の方のように緩やかに進行していくご病気とでは大きな違いがあります。
前者は、病気を発症したその日から一気に体調・環境が変化するため、病院でのサービスや介護保険のサービスなどを一斉に取り入れることになります。ほとんどの場合は入院中にさまざまな手続きをすることになるため、ご本人・ご家族共に、急な環境変化に対応するため、四苦八苦することと思います。
それに対して後者の場合、普通に生活を営んでいく中で、徐々に体調が変化していきます。その為、どのタイミングでどんな介護サービスなどを申し込めばよいのかがわからないのです。更に、緩やかに変化していくため、これといった“きっかけ”がなく、「まだ介護保険は申し込まなくていいかな?」などと思ってしまいがちなんです。
そのために、今回「今の私たちは何をしたらいいですか?」というご相談を受けることになったのです。
病気や障害へのサービスの複雑さ
医療保険や介護保険。福祉や障害。いろいろなサービスの名前は聞くけれど、今の自分には何が使えるの?お金ってどうなるの?何が得なの?メリットやデメリットはあるの?
皆さん初めはわからないことばかりです。
今回のご依頼者さんは進行性の難病です。難病の場合、病名や重症度によって、使えるサービスが変わるのです。そのため、どのタイミングでどんな申請をするか・・・についても今回お話をすることにしました。
進行性の病気。将来を見据える
進行性のご病気の場合、症状の変化に合わせて、その都度対応していくことが必要となります。
例えば手すり。介護保険サービスなどを利用する前段階では、「ちょっと不便だから、ここに手すりつけてみようかな?」などと、日曜大工で手すりをつけてみることがあります。しかし症状の変化に合わせて、動線が変わり、また別の場所にてすりが・・・、といいうことを繰り返すうちに手すりが増える。徐々に症状が悪化し始めると、今度は転倒などのリスクが高まり、昔取り付けた手すりに身体をぶつけるようになる・・・などの悪循環が生じます。
このように、症状の変化に伴って、生活スタイルが変わり、必要な支援も変わります。これをある程度予測しながら、必要なサービスを身体的・金銭的な部分と、申請の手間などの労力等を加味して、最もそのご家庭に適した方法に落とし込む必要性があります。
今回は、どのような手順であれば、より楽で安全に生活することができるか、を含めてご家族の方とじっくりとお話しすることができました。
もう一つの依頼
今回のご依頼のもう一つが「食事姿勢を整えたい」と言うもの。
上述の相談に思いのほか時間がかかったため、セッション時間ギリギリでの指導となりました。
食事姿勢を見せていただき、クッションや座布団、椅子、足台についてのフィッティングを行いました。バスタオルを使っただけのポジショニングを試した瞬間、「あっ、これは楽ちん!」とのお言葉。うれしい!!
意外と自宅にある普通のものでも対応できるんですよ。在宅リハの豆知識です。
今後の課題
今回のご依頼者さんは、これまで医療・介護・福祉サービスは一切使ったことがなく、私が初めてでした。その為、今後しなければならないことや改善すべき点も多々ありましたが、一度に生活を変えることはできません。その為ご家族の状況等も考えながら、『今、何をするか』に焦点をあてて情報提供をすることにしました。
そして、ご家族の方へは、今すべきことをクリアしたら、『次に準備すること』についての説明をしました。そうすることで、段階を踏んで必要なサービスを取り込んでいけるからです。
進行性の病気を抱えるということはご本人もご家族も、非常につらいものです。だからこそ生活に彩りを添え続けるための支援をしていく。これが、びぃどろの考える『戸別訪問』なのです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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