人は水分を摂らなければ生きていくことはできません。しかしながら水分をとるということはあまりに当たり前すぎて意識していない方が多いのも事実。
1日何杯お茶を飲みましたか?
1日の食事にはどれ位の水分が含まれていますか?
意外と自分のことでもわからないものです。ですから病気や障害などにより自分で水分量の調整ができない方への配慮も、とても難しいものです。
私の仕事柄、受け持っている利用者さんの多くが、嚥下障害を抱えていらっしゃり、栄養量や水分量の確保について、慎重に検討しなければならないことが度々あります。
言語聴覚士として嚥下評価を行う場合、食事形態の決定は『その形態で必要栄養量・水分量が取れる』という前提が必要であることを忘れてはいけません。
これは経管栄養の場合も同様で、どのタイミングで何ml補水することが必要か、という視点は必要です。
必要水分量の計算
単純に計算すると、人は1日に消費する水分量摂取しなければ脱水となります。しかし、1日に消費する水分量を毎回正確に把握することは難しいため、以下のように、年齢と体重から必要な水分量の目安を算出することができます。
新生児 | 体重×140ml |
---|---|
乳児 | 体重×120ml |
幼児 | 体重×110ml |
学童 | 体重×60~80ml |
成人 | 体重×35~50ml |
高齢者 | 体重×30ml |
食事の水分量は?
食事に含まれる水分量がわかれば、純粋に摂取するべき水分量がわかります。例えば、成人男性の食事(味噌汁付き)1人前には、1食およそ300mlの水分が含まれていると言われています。つまり3食で900ml前後。実際には食事量が少なかったり、パン食が多かったり、汁物は飲まないなどの要因で減少するため、それを加味して、食事から取れる水分量を計算します。更に、摂取量からの算出が困難な場合、食事に含まれる推測水分量として、食事の総量(g)×0.6によっても算出可能です。
水分摂取量を増やそう
食事から取れる水分量がわかれば、補水量がわかります。補水量を増やすためには以下の方法があります
①1回の摂取量を増やす
②補水の頻度を増やす
③上記を組み合わせる
1日のうち飲食物を口にする時間は何回あるでしょうか?
朝食時
昼食時
おやつ時
夕食時
この4回はほぼ皆さんが飲食されます。そこに、起床時や入浴後、就寝前などが加わる人もいるでしょう。更に服薬時や、午前のティータイムなども人によっては飲食しますね。
するとだいたい人は1日に、5〜10回程度の飲食時間があることになります。その時の水分量を少し増やしてみましょう。1回10ml増量しただけで50〜100ml増えます。成人でしたら、50ml増やせば250〜500mlも増やせます。
また、1日のうち3食の食事以外ではほとんど飲食せずに過ごす方の場合は、1回の摂取量を増やすには限界があるため、摂取回数を少しでも増やせるようにします。食間や入浴前後、就寝前後などがおススメです。
そして、この ①1回の摂取量を増やす、または②補水の頻度を増やす、のどちらかで対応しきれない場合は、両方を当てはめた「③上記を組み合わせる」ことが必要となります。
水分量の計算は誰がする
私は管理栄養士ではないため、厳密に正確に水分計算をすることはできません。しかし目安を知っておくことで、日々の生活に対して、もしかしたら・・・?という視点を持って関わることができます。栄養量や水分量のバランスが、排泄などに影響したり、体力・耐久性へ影響を与えることもあるため、体調不良などの全身状態の変化に対し、予測を立てることができるようになります。
食事支援をするということは
食事介助・食事形態・食事量・水分量・排泄・栄養・呼吸など多くのことが影響することは言うまでもありません。それらの視点を充分に持ちながら、食事の総合支援をしていきたいものです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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