私たち言語聴覚士は、「言語」と名のつく通り「ことばの障害」についての専門家です。
今日はその中でも「言葉の障害」についてご説明します。
言葉の障害って?
もちろん、言葉の障害にはたくさんの種類があるのですが、今回はざっくりと「speech(話し言葉)」と「language(言語)」の二つに分けてみましょう♪
speechの障害
これは「上手に話せない」状態を言います。
例えば、
「声がかすれてしまう」
「声が出ない」
「舌がない(動かない)から発音がうまくできない」
「口の麻痺で、滑らかに動かせない」などの状態を言います。
原因も様々ですが、例えば脳梗塞などで口の麻痺が生じた場合はうまく口が動か無くなりますし、舌癌などで舌を摘出した場合は舌が無いので発音が非常に難しくなります。あとは、声帯を閉じるための神経の麻痺が生じると、声が強くかすれることもあります。
このように「声自体」に問題が生じたり、「発音」への問題が起きるのが「speech」の障害です。
speechの障害には何がある?
もっとも一般的なものに「構音障害(こうおんしょうがい)」と言うものがあります。脳梗塞などすると、それに伴って発症することが非常に多くなります。
麻痺によって声に障害が生じるわけですから、口の体操や筋トレなどのトレーニングを行うことで回復を促していきます。
languageの障害
前述のspeechの障害に対して、こちらは「上手く言葉にできない」状態を言います。
例えば
「違う言葉に置き換わる」
「正しい言葉が浮かばない」
「言い間違う」
「会話が噛み合わない」などの症状が出ます。
こちらも脳梗塞などで発症することが多いのですが、これは「脳の障害」と言えます。脳の中の言語に関わる部分にトラブルが生じたため、言語を正しく扱うことができなくなるのです。聞こえているけれど、脳内で違う言葉に変換されたり、言いたいことはあるけれど、それを言葉に直すことができないなどが生じます。また言い間違えなどもここで起きることがあります。
languageの障害には何がある?
もっとも一般的なものが「失語症」です。読売ジャイアンツ終身名誉監督である長嶋茂雄監督もこの障害をお持ちですね。また「認知症」も同様に、この障害が生じることがあります。
訓練は症状により多岐に渡りますが、絵カードなどを使い色々なことばを出す練習や、複数の絵カードから正しい絵カードを選ぶような聞き取りの練習、読んだり書いたりなどの文字の練習などを行なっていきます。
2つの違いをもう少しわかりやすく
ちょっと「speech」と「language」の違いについて説明しましたが、イメージ湧きましたか?もう少しわかりやすい例えをすると・・・
【「歩けない」と言う状態に対して・・・】
足が無い・麻痺があって歩けない・・・「speech」の障害
歩き方を知らない・わからない・・・「language」の障害
こう言う状態に近いかな?と思います。イメージ湧きましたか?
コミュニケーションの壁
このように、コミュニケーションの障害には様々なものがあります。今回紹介したのは「話す側面」に関しての障害ですが、この他にも聞こえの部分に関しての障害もあります。また会話をする以上、聞き手の方との関係性などの環境的な側面も影響するものです。
こういったことへの支援。私たち言語聴覚士の軸となる仕事の一つです。
少しは皆さんにもお伝えできたでしょうか?
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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