医療的ケア児のママはいっぱいいっぱい
先日の戸別訪問は医療的ケアの要る小学生。昨年までは、発達に障害を抱えながらも健やかに成長していたのですが、急遽医療的ケアが必要となる事態に見舞われ、生活状況が一転した、そんな方です。
私とは、この医療的ケアが必要になってからのお付き合いとなります。
先日ふと歩いていると、偶然このお子さんのママにばったりと出会いました。私を見た瞬間ママは大号泣Σ(゚Д゚)ど、ど、どうしたの⁉
相談員さんからの情報で、最近調子が今ひとつで学校に通えていない、という話は聞いていました。「あぁ、お母さん悩んでたんだなぁ・・・」と思ったわけです。
ちょっと立ち話でお話を伺うと、慣れない医療的ケア、体調の変動、学校との意思疎通の困難さ、過密なスケジュール・・・それはそれは大変な状況でした。私へ訪問の相談をしたくても、ほっと一息つけるのが夜中。毎日過ごすのやっとで、スマホで誰かに連絡をとることもままならない状況でした。
このお母さんとは基本的にLINEで連絡を取っていたのですが、確かにいつも既読になるのが1~2日後。医療的ケア児を抱えるお母さんの中には、スマホを見る時間すらない、そういう方が多くいらっしゃいます。相談したくても夜中ではできないという気持ちもわかります。
そういった状況の中での、通りすがりのばったりだったため、お母さんが泣くのも頷ける…。その場で戸別訪問の調整をし、お互いのスケジュールの隙間に訪問予約を押さえたのです。
戸別訪問の目的
私が何を戸別訪問で行ったか。まずはお子さんの状態確認です。お口から食べる力、全身の発育、運動機能、認知機能、言語機能などなどの総合的な発達状況を確認します。前回の訪問からかなり時間が空いたため、慎重に確認しました。
そして一番大切なこと。
スケジュールの見直しです。
いま、このお子さんには毎日医療的ケア(注入)があります。注入も、〇mlを何回という指示で言われることが多いのですが、1回の注入に要する時間、補水に要する時間、睡眠時間、オムツ交換の時間、外出時間などを加味して、物理的に何時にどれくらい注入に時間を費やせるのか、という視点が必要です。
栄養量と水分量は見よう
嘔吐や下痢のあるお子さんですが、明らかに水分量が足りていない。補水して欲しいけど、これ以上注入を増やすのは明らかに負担。注入のタイミングなども綿密に相談しました。
それ以外にもスケジュール確認をしましたが、市内の病院受診、市外の病院受診、訪問看護、学校、通所、市内の外来訓練、市外の外来訓練・・・いやいや、時間足りないですよ・・・Σ(゚Д゚)お母さん、自分のための時間は全くないじゃないですか。学校や通所へ行けば、その時間はお母さんもゆっくりできるから大丈夫と思われがちですが、その翌日は疲労で体調が崩れるお子さんも多いのです。
ゆとりを作ろう
各病院、各施設のスタッフが予約をそれぞれ押さえる形になっているので、お母さんはスケジュール帳をにらめっこしながら日々を過ごすようになります。どうにかならないのかな?という疑問があっても、それを解決する手段も相談できる人もいないわけです。
わたしの立ち位置はここにあります。
戸別の意味はここにあります。
そのお子さんを囲む全てのサービスを総合的に見て、お母さんの負担を最小限にゆとりを持たせ、本人へのケアを最大限にできる生活設計を組み立てること。
1日24時間、1週間で168時間。
これは変わらないのです。
この時間の中に、本当に必要なことやりたいことを組み込むしかないのです。
お子さんに良いこといっぱいしてあげたい
あのときもっとできることあったのかな?という後悔はしてはいけない
けれど、お母さんが倒れたらそこで支援は途絶えるのです
お母さんが生き生きとお子さんと過ごせるように
今受けている医療、ケア、指導を最大限活かすためにも、調整は必要です。
ちょうど訪問中に相談員さんから電話があり、来週の担当者会議の調整ができました。そこから見直しをはかる予定です。
訪問を録画しました
今回から、ご家族の了解を得て、セッション全てを動画で撮影し、ご家族だけが共有できるようにしました。なぜそんなことをしたのかというと
①復習に使って欲しい
②同席できなかった他のご家族と共有して欲しい
③他の関係者(担任教諭、リハ職)に共有して欲しい
訪問場面を全て動画に撮影なんて、普通じゃ考えられないかもしれませんが、やはりお母さんと私だけの話だけで終わらせて欲しくないな、と思ったのです。これが、戸別の意味だとも思っています。
みんなで共有して支える。
その方法を日々模索しています。
パン粥の味を覚えててね
なんにしてもこのお子さん、訪問中に半年ぶりのパン粥が食べられた!それだけで最高♪
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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