【戸別訪問びぃどろ】情報の引き出し

ある戸別訪問での出来事

先日、戸別訪問のご利用者さんのご家族から、予約時間の15分前にキャンセルの電話がありました。

しばしば発作的に嘔吐のある方なのですが、それが急に出て、吐き気があるようだ、とのこと。食事指導を中心に入っているのでキャンセルしたいと。

当然キャンセルし、車を方向転換すると、ものの5分後、再度電話がなりました。おなじ利用者さんからです。なんとなく予想していたため、すこし笑いながらでんわにでました。

「本人が、長岡さんが来ないと納得できないみたいなので、やっぱり来てもらえる?」

発達上、こだわりのある方なので、急なスケジュール変更の受け入れができないことも理由なのですが、そんなうれしいことを言われたらお断りする理由はありません。うれしく幸せな気持ちを抱えてクルマを方向転換し、ご自宅へ向かったのです

個別にできることもする

訪問をして状況を伺い、まずは本人さんの状態確認や、ご家族への緊急時の指導などをおこないました。
本来であれば本人さんへできることはこれで終わり・・・になるのですが、そこが「個別」ではなく「戸別訪問」の良いところ。ご家族への情報提供の時間となりました。

戸別だからこそ家族と向き合う

どういうことかと言うと、市内の施設の状況、新規開設の施設、訪問看護の利用について、制度の流れなどを総合的に話し、本人さんにとって今後必要なサービスや、年齢に合わせた環境変化についてをじっくりと練り直せる時間となりました。もちろん担当の相談員さんがいらっしゃるので、私から得た情報を基に、相談員さんと話し合いをしていただきます。しかしこの話し合いも、事前情報がある場合と、ない場合とでは流れが変わります。ご家族の満足度も変わりますし、聞きたいことが十分に聞けた、という思いは大切です。

今回の情報提供の中で、とくに新規開設の施設に対しての関心が高かったため、その場で私が持っているタブレットを使って検索し、自宅からの距離を地図で確認。実際に通えるのか、通えたとして利用するときのメリット・デメリットは何か・・・など、実生活を見据えたお話ができました。

私は情報の引き出し

訪問看護ステーションに長く勤務していましたが、訪問看護ステーションの場合、本人さんに対してのアプローチを中心とするため、ご家族にここまで丁寧に話す時間がとれないことが多々ありました。この利用者さんは、訪問看護勤務の頃からの利用者さんですが、私との付き合いを「情報の引き出し」と考えています。

本人への機能訓練などの個別支援は、多くのセラピストがしてくださっています。だからこそ、家族丸ごとの生活を見るための情報源として、私を活用したい。そう思っていただけることはありがたい。

ですから私は、今日も引き出しに情報を詰め、新しい情報を探しに、車を走らせているのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。