【びぃどろ講座】裏声って、地声と違うの?

先日、『カラオケで喉が痛い!()』という記事をアップしたところ、『裏声と地声の違い』についてご質問を受けました。
声楽の要素も含むので、非常に説明が難解になるのですが、今日は裏声と地声の違いを簡単にご説明します。

そもそも地声と裏声って違うの?

実は地声というものは、定義が非常に曖昧なのですが、今回はあくまで「裏声」との対比としての「地声」について説明します。地声と裏声の違いを明確にする場合、いわゆる声楽というか、ボイストレーニングの領域になるため、私もそこまでを正確に話せる自信がないので、今回は一般的なところまでのお話になります。

「地声」と「裏声」。この二つの声の違いは大きく分けて「声のモトを作るハサミ」の違いです。え?ハサミ?

声はどこで作る?

まず声の作られる仕組みのおさらいです。声が作られる仕組みは、上述のブログ記事にしているので簡単に説明します。

声は呼気がなければ作ることはできません。ですから、まずスタートは肺ですね。

肺から呼気が上がってきて、それが喉にやってきます。その呼気は肺から上がってきた段階では太い1本の塊のようになっていますが、のどの声帯を通過するときに、2枚の声帯がぶつかり合うことで、ハサミのようにその呼気の塊をチョキンチョキンと切るんですね。例えて言うなら・・・包餡機みたいに?(笑)わかりにくいですかね?
とりあえず、これが声の素になります。チョキチョキ素早く切れば高い声、チョッキン・チョッキンとゆっくり切れば低い声、となります。

そんなわけで呼気の塊を、声帯というハサミを使って、声帯振動のリズムで刻むんです。さらにその刻む速さが音の高低に影響すると言うことは何となくイメージ湧いたでしょうか?

そして、今回のテーマである「裏声」と「地声」の違い。これは、この声の素を作る際のハサミである「声帯」のうち、使われる部位の違いが、「地声」と「裏声」の違いになるんです。

声帯の解剖

声帯は、4層構造になっていて、表面から順に粘膜上皮、ラインケ腔、声帯靭帯、声帯筋となっています。この4層を合わせて「声唇」と言います。そしてこの声唇のうち、前者3つが粘膜部分です。一番内側が筋肉となっています。
地声と裏声の違いは、ここがポイントです。

どう言うことかと言うと、地声は、この4層全て使って発声されます。筋肉まで含めた全てですね。それに対して裏声は、前者3つの粘膜部分で発声されます。これが大きな違いです。

3つと4つとでどう違う?

3つの粘膜部で発声されるのを裏声と、声帯筋も含めて4つの層全てを使って発声される地声。この二つを説明します。

「地声」を発声するときは、しっかりと声帯筋をくっつけるように声帯を閉じ、下から上がってくる呼気がそこに力を加えて通り抜けるイメージです。呼気が下から上がって、閉じている声帯を押し破って上がってくる感じですね。そして基本的に声帯を閉じる筋肉を働かせているため、押し破ってきてもまた閉じようとします。これがハサミのようになり、押し破る→閉じるときにチョッキン→押し破る→閉じるときにチョッキン・・・となりながら声の素を作っています。

これに対して「裏声」は、声帯は閉じておらず、表面の粘膜がくっついているだけ。ですから下から上がってきた呼気は、その隙間をスーッと通り抜けようとします。そしてその際に、粘膜同士が震えて、上がってきた1本の呼気の塊をグニッグニッと切ろうとするんです。しかし地声の時のように、声帯筋はつかわれておらず、粘膜部だけですから、ハサミが柔らかく、十分に切れないため、切れ味の悪いハサミで切る時のようにグニって跡をつけるような形になります。

こんな感じで「地声」と「裏声」では、声の素の作り方が少し違うんですね。

裏声は大声にならない?

裏声って大きくなりにくいですね?これは上述の、声の素の作り方によります。声の大きさは、声帯の閉じる力に影響されます。ですから、声帯がぐっと閉じている「地声」の方は声が大きくなりますが、表面の粘膜だけが張り付いている「裏声」では大きな声を出すことは難しいのです。

でも、裏声がすごく綺麗な歌手とかいますよね?あれは?って思いませんか?

ああいった方は、きちんとボイストレーニングを受けています。

一言で裏声といっても、正しい裏声を出すのは本当はとても難しいのです。のど周辺の筋肉の力み方、声帯同士の距離。これをコントロールすることによって、より正しい裏声を出すことができ、歌手のような綺麗な裏声となるのです。

私は生まれながら?にハスキーボイスらしいので、すぐに喉が痛くなります。こう言う正しい発声を習得したらいいのかな?なんて思いつつ、なかなかできないですね〜。

どの道にもプロはいるものです。
私にとって歌は歌うものではなく、聴くものですね(笑)

ちょっと説明の難しい声の話。説明がやや複雑になりました。上手く伝えるのは難しく、私もまだまだ修行が足りませんが、今回はこの辺りで。

参考になりましたでしょうか?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。