『だんらんコーディネーター』誕生秘話

訪問看護ステーションで
働いていた頃のはなしです

訪問看護ステーションは
毎月、主治医と担当ケアマネ宛に
訪問看護計画書と報告書を
提出します

書類を作ることは
さほど苦にはならないものの
書きたいことを書くための
スペースが足りないことが
しばしばありました

と、いうのも
言語聴覚士の場合
対象者の多くが
言語(構音)訓練と嚥下訓練
両方をするため
それぞれの計画を立てて
それぞれの報告が必要です

けれど規定の計画書には
計画項目の数に限りがあり
看護師や他のリハ職と
共同で作成するためには
言語聴覚士は1項目しか
計画を立てられないことが
しばしばありました

嚥下機能面と言語機能面
この二つの計画書を立案したい…
けど
書ききれない…

こんなことがよくあり
日々頭を悩ましていました

ある日、ふと
『食べること』と『話すこと』
このふたつの
共通の目的は何だろう…?

そんなことを考えました

どちらも
家族や大切な人と
『だんらんするため』なんだ

そう気がついたんです

そこで
計画書の目標欄に
『家族と団欒する』と記載し
当時の訪問看護の管理者に
見せることに

すると
あえなく却下

嚥下面や言語面などの
いわゆる
“機能や能力”に特化した内容で
計画を立てるように言われました

『なぜ食べるのか』
『なぜ話すのか』

機能訓練のその先を
見た計画を立てたい
と、強く伝えたけれど
なかなか理解してはもらえなかった

これは管理者の問題ではなくて
私がまだ
計画の立案に対して
迷いがあったことと
こんなのダメだよね
なんて思いもあったので
説得できなかったのだと思います

今でもあのとき作った
あの計画書の正しい答えは
出せないでいますが

私は
たとえ
病気や障害を抱えていても
病気や障害が治らないとしても
当たり前の生活の中で
当たり前の家族と一緒に
当たり前のことができる

それを目標にしたいなと
今は言えます

『はなすこと』『たべること』の支援

それは
その先にある
『だんらん作り』の支援です

そんな想いで
訪問したい

なので私は
言語聴覚士として
だけではなく
だんらんコーディネーターとして
訪問しています

みなさんの心の中のビードロに
ぽっぺん
素敵な音が鳴りますように

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。