【びぃどろ日記】新人STさんに言いたいこと

私はSNSをかなり積極的に公開しているので、いろいろな方からDMが届きます。もちろん言語障害や発達障害、嚥下障害の当事者の方もですが、同業者の方からも連絡がよく来ます。

今日はそのお話。

STさんって孤独じゃない?

私が初めて就職したのは、個人病院でした。同期入社の新卒のSTがもう1人いて、2人でその病院のST部門を開設することになりました。最初は病院で一緒に立ち上げを行ったのですが、途中から彼女は老健へ配属となり、別で仕事をすることも増え、結局はそれぞれが立ち上げをするという期間となりました。

とはいえ、私が言語聴覚士となった頃はどこもそれに近い状態で、先輩がいない施設で、若い新人STが四苦八苦しながら開設をしていく、というのがあたりまえでした。

その病院に2年勤務したときに、制度の改定に合わせて、訪問看護ステーションで働きたいと転職。以後12年間も訪問看護ステーションに勤務しました。その職場はSTはもちろん私ひとりでしたし、以後12年間、一度も増員することはありませんでした。

ですから私は「先輩ST」と働いたことがないんです。自分がSTとしてスキルアップするかどうかは、全て自分にかかっている。そんなふうに仕事をしてきました。

大都市で働いたことがある人以外は、きっとこういうSTが多いんじゃないかな?なんて思います。

STとして中堅くらいになってきた

私ももうSTになり丸15年が経過しようとしています。いつまでも新人のつもりでいたいのですが、なかなかそうも行かないですね。そして結局今現在でも、先輩STと共に仕事をすることがないまま成長してしまいました。

SNSを積極的にするようになり多くの方からDMなどをいただくのですが、若いSTさんからの相談がとても多いのです。本当に多いのです。そして思ったのが、新人STさんの悩みは昔も今もそんなに変わっていないんだな、ということ。

それはつまり、私のもとに寄せられる若いSTさんからの相談は、私が当時抱いていたものとさほど変わらず、そして今も私自身がぶつかる壁ばかり。

「先輩がいないんです」「こういうときどうしたらいいですか?」「オススメの書籍ありますか?」

こんな悩みが次々に送られてきます。
私は人から相談されることをあまり苦と思っていないので、いつでも誰でも気軽に答えるようにしているのですが、それにしてもみんな同じように質問されます。

やはり悩むところはみんな同じなんだな、と感じるのです。

若いことは力である

STとして経験が浅いとき、こんな事思ったことないですか?

「私じゃい他のSTなら、この患者さんはもっと良くなったのに…」

そう、かならず若いセラピストが陥るジレンマ。経験年数が浅いせいで、自分のセラピーに自信がもてない、という話し。STは個室の訓練も多いため、なかなか他の先輩の訓練を見ながら学ぶということができません。ですから、自分の患者は自分で見ないといけない、ということが往々にして起きます。沢山STの先輩がいてくれるなら、複数名での対応が取れ、自分のセラピーについての確認やすり合わせなどが行なえますが、STの人数が少ないとほぼそう言った対応がとれません。

実際、若いSTさんとベテランSTさんとだったらそんなに違うんでしょうか?

これについてはYESもNOも言えるものではありません。確かに、もっとすごいセラピストに見てもらえたほうがいいんだろうな、と落ち込むことがあるのは事実ですし、それを否定することもありません。けれど、そのときそのタイミングでその患者さんと出会えたのは、紛れもなく自分自身なのですから、今この瞬間の患者さんの状態に気がつくことができたのは自分だけなんだ、という自信を持ってもいいと思うのです。

忘れてはいけないこと

やはり初心をわすれるべからず。STとして養成校で学んだことは大切で、その知識をもった上で患者さんと接するわけですが、知識以上にまずは「目」が大切。

患者さんを見ること。よく見ること。基本情報に目を通す、様子を見る、言語面や嚥下面などのSTに求められることを見る、心の中も見る、家族背景も見る、表情を見る、生活歴も見る

その人を見る

どれだけの知識があっても、見ることができなければ宝の持ち腐れ。しっかりと見ること。そしてそこに、自分の知識では理解できないことが潜んでいるならばそこを学ぶこと。

これはたとえ新人でもできることなのです。

1年目だろうがベテランだろうが、その患者さんに対しては誰だって新人です。はじめましてなのです。だからこそ、まっさらな気持ちでその患者さんのその瞬間の様子を見ましょう。

私もまだまだ。自分のセラピーに満足できる日なんて、きっとこないと思います。それでいいのです。それだからいいのです。

若いSTさん。一緒に頑張りましょう。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。