【施設指導】カレーは本当は食べにくい?

私がアドバイザーに入っている施設で、なかなか解決しなかった「カレー問題」。今日はそれについて。

カレー問題って?

皆さんが感じていることかどうかわかりませんが、カレーって嚥下障害の方にとって、どうも食べにくくないでしょうか?

なんとなくカレーとか、シチューとかは食べやすそうだなと思われるのですが、ご飯にかけた途端に食べにくいと感じるんです。

そもそも嚥下障害の方にとって、形態の異なるものを同時に食べることは非常に難しく、誤嚥のリスクが高いため、控えるように指導することがほとんどです。

しかしカレーの場合、ルゥとご飯がそもそも形態が違うので、その時点で難しい。じゃあ別に食べようとすると味気ないし、スパイスでむせる…。なんとも難しい。

結局カレーのルゥをかけることで米粒がばらけてしまいむせやすくなるのですね。ではミキサー粥であれば良いのかというとそうでもなく、ミキサー粥はそれ自体が食べにくいので、そこにスベラカーゼという専用ゲル化剤を使用しています。

このスベラカーゼ粥。とっても食べやすいのですが、結局はこれもルゥと混ざりにくいため、かけて食べようとすると2種類の形態を同時にたべることになってしまうため、結局むせやすいままだったたりするのです。

なんだか大変だ!

相談した

そこで、スベラカーゼを作っているメーカーのニュートリーの営業さんに質問することに。どうやったらいいですか?と質問すると、こんなお返事をいただきました。

営業さん

カレーと同量位のスベラカーゼお粥ゼリーを、ミキサーで混ぜてみてはどうでしょうか?
お粥の粒子が多くなる為、スベラカーゼのお粥ゼリーの物性に近く、少しペーストっぽい?感じになりやすいです

粥ゼリーに、粥ゼリーを混ぜたルゥをかけて食べる!なんかすごい(笑)

試してみよう

そんなわけで言われた通りの方法で実験を繰り返すこと数ヶ月…。

一応今日、現状での決着がつきました。それは上記の営業さんからのアイデア採用♪

ただし、粥ゼリーを混ぜる量は少なめです。そうじゃないと粥がなくなってしまうからです。

以前より若干、ルゥと粥のテクスチャーが似たため、たべやすくなったようです。もちろん、利用者さんによってはそれではダメという方もいらっしゃると思うのですが、とりあえずはこれでいけそうです。

とことん話し合える

結局、この形態が絶対的に良いわけではないのですが、納得できない時に、私の訪問日とすり合わせをしながら食事形態の決定ができるというのは、私にとっては言語聴覚士冥利に尽きるのです。

そこまで信用していただけて、信頼していただけて、その施設の食事支援に、私の存在がしっかりと位置付けられているというのは、本当にありがたいものです。

当面はカレーの提供される日に訪問を入れながら、経過を見ていくことになりました。栄養士さんの探究心もすばらしいなぁと思います。

嚥下食の世界はまだまだ研究していかないといけませんね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。