【施設指導】限られた条件でご飯を決める

私がアドバイザーとして介入している施設に、給食提供がない施設があります。利用者さんがお弁当を持参するか、市販のレトルトなどを提供するか、になります。今日はその施設での出来事。

通所施設の特徴

通所施設の食事で気をつけなければ行けないのは、「家庭の食事と大きく変えてはいけない」という点。

1日の食事は3食で、そのうち1食を通所で楽しむとしても、2食は家庭になるのです。ですから食事の基礎は家庭。そのうえで通所では大きく脱線させずに、安全な食事となる工夫が求められるのです。

ちなみにこの施設の食事形態は厳密には設定しておらず、普通食以外は、介護食のレトルトなどを中心に能力ごとに提供しています。

通所施設の食事特徴

こういう施設の場合での嚥下調整食のポイントは「栄養量」です。本人の体格・運動量などを考慮し、必要な栄養量の目安を決めます。そのうえで提供している食事量が、その目安から大きくハズレていないかを確認することになります。

とくに嚥下調整食は、栄養量が不足することが多いため、十分な注意が必要です。

しかし今回問題になったのは、なんと普通食なんです。

病気や障害があっても普通食を食べている方は多いものです。この施設に通うAさんも普通食。ご家庭も普通食が提供されています。ご家族にお話を伺っても「普通のみんなと同じご飯ですよ」とのこと。

でもこの「普通食」っていうのは凄い定義が難しいんですね。

例えば、「うどん」って食べやすいですよね?でもこれも扱いは普通食ですよね。ではこれが「皿うどん」だったらどうなりますか?これも普通食です。でも飲み込みや咀嚼に難しさのある方だった場合、なかなかうまく食べられない可能性がでてきますね。

ですから家庭で言う「普通食」って、実は「普通食の中の食べやすそうなもの」に限っている可能性があるのです。

そうなると、普通食と言っても、結局は「ものによる」という結果になってしまいます。

これが通所では頻繁に起きてしまいます。

普通食の「ごはん」

普通食のご飯(米飯)を、レトルトで提供する場合、「サ◯ウのごはん」のようなレンジでチンするパックライスになります。すると・・・固い!ばらつく!

そしてAさんはそのご飯でむせるんですね。どうやら粒が喉に入り込んでしまいむせています。そうなるとご飯の食事形態を変えたいな・・・と思うのです。

しかし問題がひとつ。そう、「家で普通食」の呪縛です。

家庭で普通食なのに、通所でお粥というのもなかなかご家族が納得できません。ご本人も、「なぜお粥になったの?」と納得できないでしょう。そうなるとやはり「普通ごはん」にしないといけない。うーん、うまく行かない。

対応方法

もちろん、パックご飯のなかでも「やわらかごはん」というものはあります。しかし予算の都合上うまく取り入れることができない場合があります(施設によります)。また、手作りで加工するなども衛生基準を満たしている施設ではないので、できないことが多くなります。施設の職員さんの負担も最小限度にしないといけない。

これが施設の食事の難しいところ。

結果私が出した提案は3つ

【レンジでチンの方法を替える】

レトルトパックライスの場合、そのままでは固いのでチンする前に湯を足して、蒸らし時間を長く取ります。それにより米粒自体をすこし柔らかくします。

【ご飯の種類を替える】

現在の施設で使用しているレトルトパックライスがやや固いため、他の種類を探す。メーカーによってご飯の固さも変わるので、マッチしているものを検討する。

【粥ミキサーを混ぜる】

ご飯がバラけるのを防ぐために、”つなぎ”の目的のものを追加する方法です。ちょうど市販のベビーフードにお粥パウダーというものがあり、お湯で溶いただけでミキサー粥が出来上がります。

これをレトルトライスに混ぜる方法です。これは米自体は固いままですが、つなぎがあるのでバラけにくくなります。

まとめ

上記の3つの方法のうち、どれが適切かは人によりますが、いろいろな手段でレトルトパックご飯を食べやすくする方法があるということが検証できました。

ちなみにAさんについては3つ目の粥ミキサーを混ぜる方式でしばらく様子を見ることに。

食べやすくなってくれればいいのですが。

なにより食事中にむせるのは本人も辛いですし、介助する職員さんも不安でたまりません。双方が安心して食事できることが一番ですから、こういう日々の工夫をこれからもしていきたいですね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。