【びぃどろ講座】味覚を育てる

小さい頃は薄味の料理にしましょうね、なんて言いますが、一体全体薄味ってどの程度を言うんでしょうか?またいつまで続けたら良いんでしょうか?

味覚は何で感じるの?

味覚を感じる部分は主に舌です。舌に「味蕾」というものが無数にあり、それらが味をキャッチして脳に味覚として伝えます。この味蕾は、赤ちゃんがまだお腹にいるときに作られはじめ、在胎14週頃には作られると言われています。そして、生まれたのちも数を増やし、生後3ヶ月頃にピークとなります。

この頃の味蕾の数はおよそ1万個。しかも舌だけではなく、頬や口唇でも味が感じられるようになっているんだとか。なんでそこまで味に敏感なんでしょうか?

これはまだ明確になっていないと思いますが、やはり身を守るためなんでしょうね。お口に異物や有害なものが入ったときに敏感に察知して吐き出せるようにするというのはとても大切なことです。

味蕾の数の変化

生後3ヶ月をピークに味蕾ができ、そこから徐々に数が減少していきます。成人では7500個ほどまで減少し、高齢者になると3000個まで減り続けるとか。高齢になると味を感じにくくなるのはこういうことが理由ですね。

味覚の完成はいつ?

基本的に味覚が完成するのは3歳と言われています。ただし10歳ごろまでは成長するとも言われており、はっきりとは言えない部分もあります。

基本的に味覚の持つ役割は「この食べ物が体にとって必要か否かを判断するセンサー」です。例えば酸っぱいものは腐っているもの、苦いものは毒、といった具合です。体に必要なもの、例えば「甘み」は炭水化物などのエネルギー源を伝え、「旨味」はアミノ酸等のタンパク質。そして、「塩味」はミネラルなどをキャッチするようにできています。

このように、どの食べ物を食べたら、どういう味がする。そしてどう感じるなどの判断ができるよう、経験をかさねていくのです。

そして味覚経験で大切なことが、それ以外の刺激です。「視覚」「触覚」「嗅覚」「聴覚」です。また母親との会話などの体験・経験も1つのエッセンスとなります。

3歳までにすること

2歳の子供はちょうど「イヤイヤ期」ですね。いわゆる「自我の芽生え」の時期です。このイヤイヤ期は4歳くらいまで緩やかに続くお子さんも多いのですが、これが偏食にも関係していると言われます。

つまり、それまでは味覚としての好き嫌いだけで判断していたことが、「自我」が生まれたことで、「食べる」という行為を拒否したり、1度でも苦手と思った味を拒否したり、遊びたい・動きたいなどの別の行動を求めるなど、興味関心の移ろいも起きるわけです。

こういったことから、味ではない要素で食べ物を拒否することも十分にあるわけですね。

ですからイヤイヤ期の場合は食事自体がスムーズに行かないこともあるのでそこには眼をつぶることも大切です。

ただし、この時期とくにやってしまいがちなのが「食べ物でつる」という方法。どうしても大騒ぎしてしまうお子さんを静止させるために「おやつ」を与えるという方法です。

おやつも時間などを決めてたべてもらうのは良いですが、1日に何度も与えてしまうと、虫歯ができやすい口腔内になります。また「このおやつを食べたいから御飯食べない!」などになると、偏食へとつながっていくこともあります。

食事は気長に

食事は本当にたくさんの要素が絡んでおり、一概に「こうしたらいいよ」ということは言えません。たくさん情報が溢れている時代ですから「◯◯を食べたら危険!」「こんな発育はよくない!」など、不安になることもありますね。

けれど食事は味覚だけの問題ではなく、たくさんの要素が絡んでいますので、1つがうまく行かないからと言って心配することはありません。

ちなみに私は子供の頃「ほうれんそう」が大嫌いだったんですね。吐くほど嫌い。でも大学で1人暮らしを始めてから自炊するようになり、なぜか好きになりました。おとなになるにつれて、こうして味覚も変わっていくのは間違いないですね。

そういったことからも食事は焦らず気長に。家族だんらんをたのしむところから始めてくださいね。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。